家族の力で世界チャンピオンに駆け上がる。1月5日に東京・後楽園ホールでプロ2戦目を行う井上尚弥(19=大橋)が27日、横浜の大橋ジムでスパーリングを行った。この日は、両親と弟がジムに集結。母親がスパーリング中のビデオを撮影。弟はマスボクシングで拳を交え、父は熱血指導。家族の力をバネに井上はプロ2戦目も必勝を誓った。

 井上は同期でジムのホープ松本亮と6回のスパーリングを行った。「少し感情的になってしまった」と言う通り、松本と激しい打ち合いを演じた。リングサイドでは父真吾さん(41)が1回ごとに指導。反対側のコーナーでは、母美穂さん(41)が、ビデオを撮影していた。

 スパーリングを終えると、休みもなく今度は弟拓真さん(16=綾瀬西)と4回のマスボクシング。激しい打ち合いはないが、時折鋭いパンチの交換。見守った大橋会長は「弟が一番の練習相手。善戦するんですよ」とほおを緩めた。

 井上の練習は、ほとんどがこの家族4人がセットで動く。母美穂さんは、小学6年から井上の試合、スパーリングのビデオを撮り続け、DVDの数は100枚を超えた。「撮ったビデオは夕食の時とかにみんなで見る。自分が見た目で気づいたことも言うことがあります」と話した。

 井上には、もうひとり姉の晴香さん(20)がおり、スポーツマッサージの仕事をしている。練習で疲れた井上をマッサージすることもあるという。まさに、家族で井上兄弟をサポートしている。弟拓真さんは、全国選抜高校ボクシング大会の県大会を勝ち上がり、12月24日から関東大会。勝ち上がれば、来年3月に高校3個目のタイトルに挑む。その後の1月5日が兄の試合だ。「拓真との練習は自分の確認のためにやっている。2戦目はいい内容でスパっと終わらせたい」。家族の力を得て、井上はデビュー戦に続く勝利を誓った。【桝田朗】

 ◆マスボクシング

 スパーリングがパンチを打ち合うのに対して、マスボクシングは試合形式ながら、パンチは当てずに寸止めのような形式で打ち合う。距離感やスピード、動体視力を養うのに適しているとされる。