急死した元横綱大鵬さんの孫が格闘家を目指すことが21日、分かった。大鵬の納谷幸喜氏(享年72)の三女美絵子さんの長男、幸男君(18=埼玉栄高)が今春、初代タイガーマスクの佐山聡氏(55)に弟子入り。同氏が主宰するリアルジャパンプロレス入りするもので、近く正式発表される。大鵬さんから恵まれた体格を受け継いだ幸男君は3月から本格練習を始め、格闘技の世界で頂点を目指す。

 衝撃的な大鵬さん死去のニュースから2日、今度は大きな夢のある話が明らかになった。この日、両国国技館で大相撲初場所9日目を観戦した佐山氏は「大鵬さんのお孫さんを預かることになりました」と明かした。「僕も巨人、大鵬、卵焼きで育った。亡くなったのはショックだけど、そのお孫さんを指導できるのは楽しみです」と続けた。

 佐山氏が幸男君の父で元関脇貴闘力の鎌苅忠茂氏と親しかったことから、話は生まれた。「長男がプロレスをやりたがっている。面倒を見てほしい」と相談され、本人と面談したのが昨年8月。「格闘技がやりたい」という思いを聞いて「うちならプロレスだけでなく、格闘技もできる」と快諾した。

 美絵子さんには鎌苅氏との間に4人の男児がいる。いずれも大鵬さんの幸をもらった名前。息子がいなかった大鵬さんは、孫に大きな期待をかけていた。下の3人は今も相撲を続けているが、幸男君だけは相撲から離れた。しかし、祖父のDNAは生きていた。この日夜、幸男君は「自分もやっぱり、格闘技をする血を継いでいる」と話した。

 すでに大鵬さんには相談していた。「そっちの道で頑張れと言われた」と幸男君。「心配かけたのは自分なのに、一生懸命やれと言ってくれた。活躍するところを見せたかったけど、試合に出て、おじいちゃんのように有名になって、喜んでもらいたい」と、亡き祖父を思い出して話した。

 佐山氏は直接大鵬さんとは話していないが「うちは練習は厳しい、礼儀も大事にしている。そうでなければ、本当に強くならない」と、大鵬さんの指導と同じ厳しさを口にした。幸男君も「相撲に対しては気持ちがいかなかった。いい体をもらったから、何かしら頑張らなくてはと思っていたところに(格闘技との)出会いがあった」と話した。3月の卒業式後に合宿所入り、佐山氏のもとで2、3年は体を作るつもりだ。

 2メートル近い体に、祖父と父譲りのセンス。「おじいちゃんが大鵬だから、勝って当たり前と思われる。サラブレッドの血をもらっているのだから、おじいちゃんの顔に泥を塗ることがないようにやりたい」と幸男君は決意を口にする。佐山氏も「本人にプレッシャーもあるだろうが、僕にもプレッシャーがある。でも、必ず強くします。まずアルティメットで優勝させたい。その後はプロレスも考えられる」と将来を語った。

 幸男君は「おじいちゃんと佐山先生が目標」と言った。昭和の時代、誰もが愛した相撲界のスーパースター大鵬さんの遺伝子を、その少し下の世代が熱くなったプロレス界のスーパーヒーロー、タイガーマスクが鍛える。「格闘技界を、プロレス界を、いや日本を元気にしたい」と、佐山氏は大器に期待して言った。