<新日本:G1クライマックス>◇11日◇両国国技館◇1万1500人

 真夏の祭典「G1クライマックス」で、新王者が誕生した。内藤哲也(31)が4度目の挑戦で、初制覇を成し遂げた。Bブロックを勝ち上がり、棚橋弘至(36)と優勝決定戦。26分44秒、スターダストプレスからのエビ固めで優勝を決めた。昨年のG1で、右ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂。約8カ月の欠場を強いられるなど苦い経験を経て、中邑、棚橋、オカダの3強に食い込み、新時代の幕を自らこじ開けた。

 がむしゃらにつかみ取った。超満員の両国国技館を包み込む「内藤コール」のど真ん中で、力強く拳を握りしめた。「この夏の主役は俺だ!」。何度も繰り返してきた言葉を、内藤が自らの力で現実にした。「棚橋弘至」という大きな壁を乗り越えた。

 開始のゴングから痛む膝を非情なまでに攻められた。思うように動かない足をたたき、立ち上がった。棚橋得意のスイングブレイドで反撃すると、グロリアを浴びせ、マットに寝かせた。胸を拳で2度たたき、コーナーポストに上がった。美しい回転で完璧に決まったスターダストプレスが、新時代の幕開けを告げた。「どんな夢でも諦めなければかなうんだ!」。自信に満ちあふれた表情で言い切った。

 簡単な道のりではなかった。入団当初から天才と呼ばれ、期待を集めた。11年のG1で準優勝し、同年10月にはIWGPヘビー級選手権にも挑戦した。才能は開花しかけた。それでもそびえ立つ中邑、棚橋という壁を越えることはできなかった。「あと1歩」にもがき苦しむ中、さらなる試練が襲った。

 昨年のG1で右膝十字靱帯(じんたい)を断裂。復帰までに8カ月半を要した。リハビリの日々に、心はすさんだ。「もう俺の居場所はないんじゃないか」。気持ちと反比例するように、新日本は盛り上がった。盤石だった棚橋体制を止め、「レインメーカー」として席巻する後輩オカダをリングの外から見つめた。

 もやもやを吹き飛ばすため、自らを厳しい環境に追い込んだ。試合会場で解説やサイン会を行うことを会社に懇願した。「試合の空気と、動けない自分とのギャップはつらかった。それでもあの中にいたかった」。ファンから直接聞く「待っています」の声がくじけそうになる心を支えた。

 6月に復帰し、まだ2カ月。大会中には3度病院に行き、たまった水を抜いた。階段を上がることさえままならない状態で、リングに上がり続けた。そして超えられなかった中邑、棚橋を倒し、夏の主役の座をつかみ取った。

 まずは7月の秋田大会で敗れたNEVER無差別級王者田中将斗へのリベンジを目標に掲げた。「俺の夢は変わらない。新日本プロレスの主役は俺だ!」。1月4日の東京ドームが濃厚と思われる、IWGP王座挑戦に向け、もう立ち止まらない。【奥山将志】<内藤哲也(ないとう・てつや)アラカルト>

 ◆生まれ、血液型

 1982年(昭57)6月22日、東京都足立区。AB型。

 ◆スポーツ歴

 サッカーと野球。00年アニマル浜口ジム入門。

 ◆入団

 05年11月新日本の公開入団テストに合格、同年12月に合宿所入り。06年5月の宇和野貴史戦でデビュー。

 ◆タッグ

 08年3月高橋裕二郎と「NO

 LIMIT」を結成。同年10月IWGPジュニアタッグ、10年1月同タッグ王座獲得。

 ◆海外修行

 09年に渡米し米団体TNAに参戦。同年メキシコCMLLに参戦。同年12月の髪切りマッチに敗れ丸刈りになった。また同時期にジュニアからヘビー級に転向。

 ◆得意技

 ジャンピングエルボーアタック、スターダストプレス。

 ◆新日ファン

 新日本に入門するまで熱心なファンで、ファンクラブの会員でもあった。

 ◆サイズ

 180センチ、102キロ。