ボクシングのWBC世界ライトフライ級王者・井上尚弥(21=大橋)が27日、9月5日の同級13位サマートレック・ゴーキャットジム(タイ)との初防衛戦に向け、横浜市内のジムで練習を公開した。4月の王座奪取時は、減量苦の影響で試合中に足がつるアクシデントに見舞われた。V1戦に向け、管理栄養士と契約し、食事、減量法を改善。日本最速の6戦目で世界王者となった怪物が、万全の状態でリングに上がる。

 上半身しか動かないほど減量に苦しんだ前回の試合前と違い、井上は華麗なフットワークから次々とキレのあるパンチを打ち込んだ。120回を超える過去最多のスパーリングを中心に、王座奪取後もこれまで以上の練習量をこなしてきた。「あとは体重調整だけ。食べながら動けているので、調子は全然いい。インパクトのある勝ち方にこだわりたい」と力強く話した。

 気力で体重を落としてきた怪物が、苦い経験を繰り返さないために意識を変えた。元2階級制覇王者・長谷川穂積も指導していた管理栄養士の村野あずさ氏と契約し、減量法の改善に着手。通常時56キロだった体重が4キロ近くも増えるなど、成長を続ける21歳の肉体になるべく負荷をかけずに落とす方法を追い求めた。

 具体的な変更点は2つ。これまでまったく取っていなかったサプリメントの導入と、食事メニューの改革だ。父の真吾トレーナーが「食卓から油ものが消えました」と話すように、定期的に食べたものの写真を村野氏に送信。食材を変更するなどのアドバイスをもらうことを繰り返してきた。

 サプリに関して、村野氏は「食事量を減らしながらでも、栄養を補っていける。練習前には燃焼を促すもの、練習後には疲労回復速度を上げるようなものを取ってもらっている。免疫力、対抗力を落とさない効果もある」と説明する。

 だが、陣営には「ライトフライ級は限界」という共通認識があるのも事実。10キロ近くに及ぶ減量は、トレーニングで作り上げた筋肉を壊さなければ落ちないほどで、今回の試合後にも階級を上げる意向だ。48・9キロのリミットまでは残り2キロ。「王者になっても攻めの気持ちで臨む」と語る井上に慢心はない。自分との闘いに打ち勝ち、最高の状態でリングに上がる。【奥山将志】