WBA世界フライ級王者亀田大毅(21=亀田)が「ポパイ」になる。21日、初防衛戦(25日、東京ビッグサイト)で対戦する同級5位坂田健史(30=協栄)と、都内で別々に予備検診を行った。王座を奪取した2月の世界戦に続き、前日計量1週間前から体重を一気に約9・2キロも落とす、独自の減量法を今回も採用。前回は計量2日前に貧血で倒れるなど試合前にフラフラになったが、ホウレンソウを食べている今回は順調。この日も冗舌で、王座防衛に自信をみせた。

 因縁対決を前に、大毅のもう一つの「戦い」が始まっていた。予備検診後、大毅は17日に減量を開始したことを明かした。「その時で体重60キロ。もうだいぶん落としてる。減量はまあまあや」。フライ級のリミットは50・8キロ。24日の前日計量までたった1週間で9・2キロをそぎ落とす計算になる。「食事はほとんど抜いてるよ。食べる量はこれぐらいちゃう」と、左手の指を丸めて見せた。「食べてるのはホウレンソウとか、体に良いもの」と、栄養素満点の緑黄色野菜の名前を口にした。

 通常、日本のボクサーは試合まで約1カ月かけて計画的に体重を絞り込む。わずか1週間で約10キロ一気に落とす減量法は異例だが、大毅なりの明確な理由がある。「1、2カ月かけて節制しても練習はする。節制しながらだと頭を打たれれば危ない。だから練習がおろそかになると思う。いいスパーをしてご飯食べて寝ての繰り返しが大事。今回も木曜(16日)まで食べてスパーしてたからね」と、解説した。

 実は世界王座を奪取した2月の世界戦も、この減量法を採用した。しかし、計量2日前に貧血で自宅廊下で倒れ、試合直後も39度の高熱で祝勝会を欠席した。短期間での過酷な減量が原因の1つと考えられた、この苦い経験を生かして、今回は貧血対策もかねて鉄分を豊富に含む、ホウレンソウを減量食に取り入れた。

 2月の世界戦前の予備検診後は、か細い声でほとんど言葉を発しなかったが、この日は冗舌だった。「元気そうだね」の声には、「そうやろ。実は体重を落としてなかったりして」と冗談で返した。計測器の違いで、前回より身長が1・3センチ縮んだことも「おっさんやな」と笑い飛ばした。「今は元気ないけど熱い試合をするよ。勝つ確率は100%や」。大毅がホウレンソウで減量という「難敵」を打ち破った勢いを、初防衛につなげる。【浜本卓也】