横綱白鵬(30=宮城野)が、自身の持つ最多記録を更新する34度目の優勝を果たした。日馬富士(30)を寄り切りで下し、14勝1敗。67年初場所の大鵬以来48年ぶり史上2人目の2度目の6連覇を達成した。表彰式の場内インタビューでは、初場所後の審判批判騒動について言葉を詰まらせ、約25秒間も沈黙。支度部屋では15日間無言を貫き、審判部とのしこり、わだかまりを残したままの優勝となった。

 バツの悪さか、苦笑いか。白鵬が、何とも言えない表情を浮かべた。負ければ照ノ富士との決定戦が待つ状況で、日馬富士との激闘を制した。34度目優勝を決めた後の表彰式インタビュー。春場所をどんな気持ちで迎えたのかを問われた横綱は「いろいろ騒がせましたけど、まあ…」とこぼすと、言葉を詰まらせた。

 満員札止め7200人の観衆からは拍手が湧き起こる。どんな思いが脳裏をよぎったのだろうか。約25秒、無言の時が流れた後で「まあ、頑張ります」と続けた。しこり、わだかまりを残す心中が透けて見えた。

 異例の優勝だった。初場所後、審判部を批判し騒動になった。バラエティー番組での謝罪はあったが、批判した経緯について詳しい説明はなし。春場所では、一連の報道への不満もあり、口を閉ざし続けた。この日、取組後の支度部屋では、初日以来14日ぶりに前を向いて座ったが、質問には応じなかった。

 北の湖理事長(元横綱)は場所前に「いつまでも尾を引くことをしてはいけない。力士は土俵で頑張るだけ」と、舌禍問題の収束を口にした。だが、協会内部、特に痛烈批判された審判部では春場所番付編成会議の時「呼び出せ」「出場停止だ」という強硬案も飛び交っていた。伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)が「相撲人気が高まっているんだから、そんなこと言うな」と説得して事なきを得たが、直接の謝罪もない白鵬への不満は多くの親方衆の中に残ったままだ。

 大横綱の異変は、近い関係者も感じている。親しいモンゴル人力士は「白鵬は朝青龍みたいになってきた。思っていることを何でも言うようになった」と口にする。「どうすれば、周囲との関係を修復できるか」と、真剣に思案する後援者もいるほどだ。

 へそを曲げたままの状況でも、敬愛する大鵬に並ぶ2度目の6連覇は達成した。表彰式では「本当に1つ、2つ上に行ったような相撲内容だった。いろんなものにとらわれず、自由にやったような気がします」と満足げに語った白鵬。モヤモヤを抱えたままで、前人未到の地を歩む横綱は、どこに進もうとしているのか。真の胸中はまだ見えない。【木村有三】