横綱日馬富士は大関豪栄道を下して2敗を守り、千秋楽で白鵬に勝てば4場所ぶり8度目の優勝が決まる。

 余裕すら感じさせた。単独トップを守り、8度目の賜杯に王手。それでも日馬富士は「明日は明日の風が吹く」と、どこ吹く風だった。2度目の立ち合いで、狙った左上手は逃した。でも慌てない。右を差し、上手を取り直すと、じっくり待った。豪栄道の2度の下手投げにも動じない。動きが止まると、上手に力を込めて豪快に転がした。「ガッチリ上手が取れていたので。冷静だった」。まさに横綱相撲だった。

 この日の朝稽古後、新聞を眺め、世界の情勢について報道陣と雑談。好きな偉人を松下幸之助、福沢諭吉と挙げ「経済って『世を収め、民を救う(古典の「経世済民」)』という意味。面白いよな」と話すなど、リラックスムード。土俵とは正反対の柔和な表情を見せていた。

 直後の結びで稀勢の里が勝利する姿を見届け、千秋楽で決定戦になる可能性も残った。「何もない。自分のことで精いっぱい」と意に介さなかったが「余裕があるのでは」と指摘されると「ウソ言うなよ」とちゃめっ気たっぷりに笑った。これが、綱の貫禄だ。【桑原亮】