大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が、綱とりの夢を継続させた。優勝には届かなかったが、表情に落胆の色は見せなかった。「最後にいい感じで締めくくれた。勝ち星を拾えた相撲もあったし、いい相撲もあった。いい経験だった」と振り返った。

 7勝7敗と瀬戸際に立たされた大関豪栄道(30=境川)を、強烈な左のおっつけで後ろ向きにし、鋭い足の運びで押し出した。「集中してやることだけ考えた。後は待つ身」と控えで結びの一番を待ち、日馬富士の優勝を見届けた。

 30歳となって迎えた初めての場所。優勝にはまたも届かなかった。ただ「力はまだまだつくと思う。これからどんどん良くなってくる。そういう意味では毎日楽しみです」と話した。13勝の春、夏場所と12勝の今場所。決して大崩れしなかったことも、成長の証しである。あとは1つの壁を突き抜けられるか。「変わらずやるだけです。特別なことができるわけでもない。巡業から体をつくって、いい準備をしたい」。あと少しに迫っている賜杯へ、信じた道を突き進む。