関脇高安(27=田子ノ浦)が初日から10連勝を飾った。西前頭2枚目の貴ノ岩の注文相撲にも動じず、はたき込み。初場所に続く2桁で、夏場所の大関とりへ足固めができた。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、関脇の無傷10連勝以上は14人目で、過去13人はいずれも横綱、大関に昇進している。兄弟子の横綱稀勢の里も全勝を守り、同部屋力士2人だけの同時10連勝は49年夏以降、初めて。

 振り向いたその顔は、まるで鬼のようだった。立ち合いで、高安は変化をされた。貴ノ岩に、自分の右に動かれた。心は乱れなかった。「頭には入っていました。動くならあっちの方だと。しっかり相手が見えていました。全然大丈夫でした」。

 立ち合いの踏み込みは、いつもと違う左足。変化も想定し、胸から当たりにいった。だから踏みとどまれる。右足はまだ、土俵中央の仕切り線にかかっていた。これが貴ノ岩を慌てさせた。鬼のような形相がなおさらひるませた。「すぐ対応できました。あれも相撲。しっかり残れて良かった」。慌てて出る相手を、はたき込みで退けた。何をされても動じない。強さがみなぎっていた。

 初日からの勝ちっ放しが10に伸びた、前頭7枚目で13年初場所6日目から記録した9連勝も更新して、初日からでなくても自己最多。それを関脇で塗り替えた。1場所15日制が定着した49年夏以降、関脇の初日から10連勝は14人目。過去13人は全員、大関以上に昇進した。大関とりへ、確かな足固めができあがった。

 今場所、たくましい体を意のままに操れる。「体重が増えすぎないよう、コントロールして食べている」。最初の大関とりだった昨年九州では、180キロ超と自己最重量を記録して「ちょっと重かった」。反省を生かして、新横綱との激しい稽古と自制で減らした。1月末の健診は173・8キロ。そこから「しっかり食べて、体をしぼって、質のいい体をつくった」。今はベストと言い切る176キロ。「お酒は1滴も飲んでいないです。場所前から」。

 同部屋の力士2人が初日から10連勝で肩を並べるのは04年春場所の朝青龍、朝赤龍以来13年ぶり。だが、当時は大関千代大海も並走していた。同部屋2人だけとなれば史上初。優勝争いは終盤戦へと突入し、11日目は横綱鶴竜と組まれた。「(優勝争いを)意識しながらリラックスしてやります。気持ちよく、毎日過ごせるように」。気負うことのない姿に、すごみがにじみ始めた。【今村健人】