西前頭10枚目の宇良(24=木瀬)が通算100勝を挙げ、新入幕から2場所連続の勝ち越しを決めた。21センチ大きく、54キロ重い三役経験者の魁聖を切り返しで破った。残り5日間に初の三賞を視野に入れ、優勝戦線に残って終盤戦に挑む。

 勝っても負けてもひょうひょうと…そんな男が珍しく無邪気に喜んだ。宇良の声のトーンが上がった。

 「へ~、それに関しては…。100勝記念にジュースで乾杯しようかな」

 新入幕から2場所連続で勝ち越した。春場所は千秋楽に決め、今場所はまだ10日目。なのに「今日が千秋楽ならうれしいですけどね」と平静だった。ところが、15年夏場所の序ノ口デビューから積み重ねた「100勝」には大きく反応。3度も「びっくり」と言った。142番での到達は、60年名古屋場所以降(幕下付け出しを除く)で元横綱武蔵丸、朝青龍に並ぶ8番目のスピードとなった。

 この日も満員御礼の国技館を沸かせた。195センチ、191キロの巨漢魁聖を、174センチ、137キロの体で翻弄(ほんろう)する。おなじみの低い当たりから、捕まえようと前に出る相手を左ではたいて、体を入れ替える。土俵際で相手の右半身に張り付き、背後から左足で切り返した。

 師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)が今場所の弟子の充実ぶりを語る。

 「幕内のリズムが見えてきたんじゃないかな。相撲だけじゃなく、空気とかね。もともと自分の体のことをよく知ってるし」

 残り5日。今日24日は学生相撲出身の1学年先輩、正代と同じ8勝2敗で激突する。「初日からやってることを変わらずにやるだけです」。全勝の白鵬、日馬富士と2差。優勝戦線で踏ん張れば、初の三賞は確かに見えてくる。【加藤裕一】