【上海11日=瀬津真也】中国・上海を本拠にするSNH48の宮沢佐江(23)と鈴木まりや(22)が、念願の劇場デビューを果たした。昨年8月にAKB48からの移籍を発表も、日中関係が冷え込みステージに立てない状況が続いていたが、ようやく当局の許可が下りた。同グループ結成1周年のタイミングで2人は、思う存分に歌い踊った。

 長かった。日本での成功を置いてまで、新たな挑戦を決意したのに、スタートラインに立つまでに、1年以上もかかった。「さえちゃん、まりや」の大コールで迎え入れられたアンコール。仲間との絆を歌うバラード「支え」で、宮沢はこらえ切れずに涙した。1年間、ともに支え合ってきた相棒鈴木が、そっと肩を抱くと2人は笑顔に戻った。ラストは宮沢がセンターで「ヘビーローテーション」。2人で1つのスタンドマイクで歌うと、330人の観客は、この夜最大の歓声でたたえた。2人が本当の意味でSNH48の一員になった瞬間だった。

 目標があるのに前に進めない。苦しい1年間だった。48グループにとっての新大陸中国に、一大決心で移籍したのは昨年夏。しかし、直後の尖閣諸島の領土問題で、日中の政治的関係が冷えきった。2人もファンも文化交流の親密さは変わらないと信じたが、今年1月に行われたデビュー公演では、(出演のための)ビザ(査証)が発行されず、活動は練習などに限られた。今回、ようやく取れたのも短期ビザ。関係者は「長期ビザは申請から許可が出るまで、もっと長い時間がかかる。しかも、その申請期間中は、短期ビザはもらえない決まり…」と漏らす。2人は、ひとまず13日のグループ結成1周年公演までは出演するが、次回は未定。取り巻く環境は厳しいままだ。

 それでも、宮沢と鈴木は、経験の浅い中国人メンバーたちの教師役も担っている。鈴木は「皆で皆を引き立たせ合う強くも優しいグループにしてみせます」と誓い、宮沢は「8月30日に劇場がオープンしたばかりなのに、最初からメンバーとファンに一体感あるのは、数ある48グループの中でも初めて。ファンの皆さん、私たちにビシビシ言ってください!

 一緒にSNH48の未来を作っていきましょう」と呼び掛けた。この情熱こそが、AKB48グループを支える原動力だ。