25日に行われたAKB48の握手会イベントで、メンバーが握手会を訪れた男に襲われ、けがをする事件が起きた。「会いに行けるアイドル」として05年の結成以来、最も大事にしてきたイベントでの悲劇。警備態勢の再考や、危険にさらされたメンバーへの心のケアなど、今後のイベントへの影響は避けられない見通しだ。一緒にイベントに参加していたメンバーたちは、ショックを隠せないまま、この日夜、帰京した。

 岩手で握手会に参加したメンバー数十人は、午後8時40分ごろ、スタッフに伴われながらJR盛岡駅に到着した。マスクで顔を隠すメンバーもいたが、多くがうつむきながら、暗い表情で改札を無言で通り、帰京の新幹線に乗り込んでいった。同じステージに立ち、苦楽をともにしてきた仲間が襲われるという悲劇。計り知れないショックが、雰囲気からも見て取れた。

 JRの東京、上野の両駅には、多くの報道陣が詰め掛けたが、メンバーは姿を現さなかった。乗客などの証言によると、混乱を避けるためか、手前の大宮駅で降りたようだ。事件について、ブログや交流サイト「グーグルプラス」で書き込むメンバーはおらず、一様に口を閉ざした状態になった。

 「会いに行けるアイドル」が、会いに来た男に襲われた。この事件を受けて今後、イベント会場の警備強化は必至だ。一部の握手会やコンサートでは、入場時にかばんの中をチェックする荷物検査が行われる場合もある。主催者は「トラブルがあると今後のイベント継続が難しくなる」と、ファンの自覚ある行動を呼び掛けていたが、この日を含め、最近の握手会では行われない場合がほとんどだった。ある関係者は「いつか不測の事態が起こるのでは」と危惧していた。そんな中、梅田容疑者はメンバーに危害が及ぶところまで凶器を持ち込んだ。メンバーの安全が100%保証されない事態であれば「会いに行けるアイドル」のコンセプトも見直しを迫られる。

 前日24日には、6月でAKB48を卒業する大島優子(25)が最後の握手会に出席した。イベント後、大島は3000人のファンに近寄り記念撮影に納まった。主催者側がファンを信頼しているからこその、こうした光景ももう見られなくなるかもしれない。NMB48はこの日、大阪・難波の劇場で公演を通常通り行ったが、終演後の恒例となっていたメンバーとファンのハイタッチを中止した。

 6月7日に「第6回選抜総選挙」が行われる。翌日には大島が最後の劇場公演を行う予定。ビッグイベントを前に、300人以上が在籍する世界最大のアイドルグループは、最大の売りにしてきたファンサービスと、メンバーの安全との間で揺れ動いている。