映画「図書館戦争 THE LAST MISSON」のV6岡田准一(34)はいろんな意味で突き抜けている、と思う。

 終盤、薄暗がりでの乱闘シーンには泥臭いほどのリアリティーがある。日頃の格闘技研究と鍛錬がうかがえる。対照的にヒロイン栄倉奈々(27)とのやりとりでは「純心」を自然にのぞかせる。硬軟のめりはりがハンパじゃない。

 共演者の栄倉、田中圭(31)、福士蒼汰(22)らと行ったPR活動では、適度にボケながらまんべんなくトークを回す。「座長」の貫禄である。

 演技力、バランス感覚にはもともと定評があったが、またひと皮むけた印象がある。

 10日の公開を前にインタビューする機会があった。どうやら「貫禄」の一因は、昨年のNHK大河ドラマの試練にあったようだ。「軍師官兵衛」に主演した岡田は「大河は特別です。官兵衛漬けの1年でした」とその重みを振り返った。

 大河ドラマのスケジュールは原則、月曜日がリハーサル、火~金曜日に収録が行われ、これが1年続く。

 「映画の撮り方に慣れていたこともあって、リハーサルは台本を持たずにやりたかったんです。(セリフが)入っている状態で自然にやりたかったんですね」

 その週の収録分は前週に頭に入れておく、収録を続けながら今度は翌週収録分の台本を頭に入れる、という繰り返しである。

 「だから、移動中はいつも台本10冊(10話分)以上持ち歩いてましたね」

 聞いているだけで頭がこんがらがりそうな話である。「頑張っているところを見せるのも主演の役割ですから」。ハードな日々を明かすのは、ちょっと照れくさそうでもあった。

 「大河ドラマ」のブランド力は、脇に登場する「重鎮級」の俳優たちにも火を付ける。古くは「武田信玄」(88年)の父・信虎役、平幹二朗(81)しかり、「独眼竜政宗」(87年)の秀吉役、勝新太郎(享年65)は文字通り鬼気迫る演技を映像に焼き付けた。

 「-官兵衛」でも、寺尾聡(68)の家康の存在感や、主君筋の小寺政職にふんした片岡鶴太郎(60)のとんがった演技が記憶に残る。これを受け止める主役にはさらなる気合が必要なのだろう。一方で、劇中の「身内」は、視聴者に団結力を見せなくてはならない。

 「息子役の(松坂)桃李君(26)は1年間『父上』と呼び続けてくれたし、家来の(濱田)岳さん(27)たちはいつも『殿』でしたから。そうやって空気が、雰囲気が作られていくんですね。だからこそ、気を緩める時間も必要なんです」

 情報番組でしばしば取り上げられる岡田の「後輩俳優いじり」である。撮影の緊張感の裏返しということなのだろう。「笑顔がなければ、1年間は乗り切れませんから」と笑った。現場に目を配るプロデューサー的感覚も身につけたようだ。

 「図書館戦争」の銃撃戦の裏話にもそんな一面がのぞく。「アクションはタイミングを間違うとケガにつながる。一番集中しなきゃいけないところなんです」と語った後、「(撮影用の)薬きょうは1発1000円くらいしますから。無駄にはできないんです」と真顔で付け加えた。

 コスト意識も徹底している。【相原斎】