長渕剛(58)が22日夜、静岡県富士宮市の富士山麓で「10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」をスタートさせた。会場のキャンプ施設「ふもとっぱら」に集まった約10万人の前に、ヘリコプターに乗って登場。「勇次」の歌唱時には、ファンへの感謝で男泣きした。23日午前6時前、富士山から昇る朝日をともに見るまで歌い続ける。

 前祝いのような花火が打ち上がり、豪華なみこしが会場を練り歩いた直後だった。富士山麓に10万人から「つよし~っ」のかけ声が響き渡った。山頂にまで届くかのような大歓声に包まれ、ギターを持った長渕がヘリコプターに乗って登場した。

 横幅約130メートル、高さ約40メートルの巨大ステージは、左右対称に裾野を広げて富士山を思わせるようだ。そこに長渕は仁王立ち。客席を指さしてファンをあおると、1991年のアルバム表題曲「JAPAN」から9時間に及ぶオールナイトライブを始めた。

 「音楽を通して、生きる意味、生きる感覚をみんなと共有したい。日本人の持つ連帯と自尊心をもう1度、呼び掛けたい」と決意し、動きだして約2年。待ちに待ったこの日だ。

 「10万人の拳を日本の空に突き上げろ」「最高の伝説を作ろう」「朝日を引きずり出すぞ」

 長渕の叫びに応じ、会場を埋め尽くす日の丸が揺れ、歓声が響いた。その光景を見つめ、長渕が感極まった。「勇次」の歌唱時だ。

 「お前らが主役だ」と言い、何度も「信頼」と口にした後の男泣きだった。「富士山麓に集まれ」の呼び掛けで集まった10万人への感謝…。北は青森県から南は鹿児島県まで、前日深夜に出発し、10時間以上をかけて夜通しバスで来たファンもいる。彼らの表情を見ようと、ライトは客席を何度も照らした。

 04年に故郷の鹿児島・桜島に約7万5000人を集めたオールナイトライブから11年。日本の象徴で、霊峰の富士山麓で10万人と1つになった。デビューから38年。ファンとの強い絆に支えられ、長渕は歌い続ける。

 ◆長渕剛(ながぶち・つよし)1956年(昭31)9月7日、鹿児島県生まれ。78年「巡恋歌」で本格デビュー。「順子」「乾杯」「とんぼ」などヒット曲多数。アルバム「昭和」「JAPAN」などオリコン週間ランキングで12作首位は男性ソロ最多。俳優としてもTBS系ドラマ「家族ゲーム」「とんぼ」、映画「オルゴール」「英二」などに主演。全国で詩画展を開催するなど芸術家としても活動。血液型A。

 ◆桜島オールナイトコンサート 04年8月21日夜から、鹿児島・桜島の荒れ地を整地した野外会場に約7万5000人を動員して行われた。翌22日朝まで2回休憩を挟み、約9時間で42曲を披露した。会場面積は13万平方メートル。経済効果は約50億円とされ、会場跡地には記念モニュメント「叫びの肖像」が立っている。

<長渕ライブ アラカルト>

 ▼会場設営 期間は7月25日~8月21日。大型トレーラー32台、11トントラック128台。人員は320人。

 ▼フード出店数 120店舗。うち約3分の1は地元。

 ▼救護 医師20人、看護師65人、ライフセーバー22人。

 ▼スタッフ 総数約2500人(会場・駅・バス乗り場などの警備1800人、運営200人、制作500人)。

 ▼簡易トイレ 約800基。