7月に86歳で亡くなった文学座劇団代表の俳優加藤武さんをおくる劇団葬が5日、東京・青山葬儀所で執り行われた。江守徹(71)角野卓造(67)はじめ、劇団員200人を含む計550人が参列、献花した。

 葬儀委員長を務めた江守は、63年の初舞台「トスカ」で共演して以来、50年以上の付き合いだという。「ちょっとこわもてだけど、実際は優しくていい方だった。はっきり何でもおっしゃる方だった。今の若い人間にとっては、大先輩ですからね。残念です」と話した。この日から2、3カ月前、亡くなる直前に、文学座の会議で会ったのが最後だという。

 角野は「突然だったので、すごく驚きました」と神妙な面持ちだった。「今年の1月、旅公演をしている旅先に、お手紙をくださったんです。『ごくろうさま』と激励していただいて、すごくうれしかった。ずっと仕事を見守ってくださっていた」と明かした。「一見、怖そうな方なんですけど、実はちゃきちゃきの江戸っ子で、シャイで、ぶっきらぼうなところがあった。気持ちの優しい方だった」と惜しんだ。

 関係者によると、この日使われた遺影は、今年6月の取材の際、撮影されたものだという。戒名は「無相院阿吽演武居士」(むそういんあうんえんぶこじ)。

 加藤さんは早大卒業後、中学教諭を経て、52年に文学座入り。こわもての風貌と愛嬌(あいきょう)のある演技で、悪役や個性の強い役どころを務め、北村和夫さんとともに同座の中核俳優として活躍した。黒沢監督の「悪い奴(やつ)ほどよく眠る」「乱」、今村昌平監督「豚と軍艦」など数多くの映画に出演。市川崑監督「犬神家の一族」「八つ墓村」など横溝正史原作の金田一耕助シリーズでは、市川監督に人柄を見抜かれ、シリーズ途中でコミカルな役柄に変更された。

 今年7月31日、スポーツジムのサウナで倒れ、その後、搬送された病院で死亡が確認された。