次期朝ドラ「べっぴんさん」は“涙活”でスタート-。10月3日放送開始のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(月~土曜午前8時)の初週試写会が5日午前、NHK大阪放送局で行われ、母の愛、親子の絆、人情物、世話物を前面に押し出した涙必至のドラマとしてスタートする。

 ヒロイン芳根京子(19)の子役時代を演じる渡辺このみが、菅野美穂ふんする病床の母を見舞い、認めてもらおうと、刺しゅうに悪戦苦闘する。そんな第1週放送分を見終えた芳根は、初収録で子供を背負って臨んだ当時を思いだし「最初から自然と涙が出ました」と照れた。

 今ドラマは「じぇじぇじぇ」「びっくりぽん」のような決めゼリフもなく、かといって「マッサン」のような外国人ヒロインでもなく、ヒロインも芯は強いが、なかなか自分の意見を口にできない、引っ込み思案なタイプ。元気があふれるような、分かりやすい“押し”の強さはないが、けなげに強く生きる女性で、ある意味、朝ドラの原点に返ったような作品でもある。

 担当の三鬼一希チーフ・プロデューサーは「手前みそですが、絶対に泣けます。母と子、人情物、世話物の要素を意識して、じっくり見ていただければ、絶対に泣ける。朝支度でお化粧中の方には申し訳ないですが、朝から涙活して、お出かけください」と話した。

 「べっぴん-」は、95作目の朝ドラ。子供服のメーカー「ファミリア」(神戸市)の創業者の1人、坂野惇子さんをモデルに創作。神戸の山の手で、お嬢様育ちのヒロイン・坂東すみれが、戦争で多くの物を失い、焼け跡の中から、女性のために、子供服作りに立ち上がるストーリーだ。

 5月に神戸市内でのロケなどで収録スタート。4カ月近く収録を続けている芳根は、子役を演じた渡辺にも刺激。「このみちゃんは、実際に刺しゅうを徹夜でやっていそうな雰囲気で演じていた。あ、すみれちゃんだ! と思った」と話す。自分の出番ではなかったが、子役のすみれが、母親役の菅野から、キーワードの「クローバー」について説明を受ける場面の見学に行ったという。

 「自分に言われているのではなくて、私は見ていただけですけど、すっごく自分の心に響いた。気持ちが変わったというか、すみれになれた気がしました」

 以後も、子役の演技も見学し、自分の中に「すみれ」を入れ込む作業を続けたという。春のヒロイン発表当時からは、顔つきもシャープになり、強さを漂わせるようにもなった。

 高視聴率続きの朝ドラのバトンを受けることにも「あ~、次は私なのか、いよいよだなって、プレッシャーはあります。でも(視聴率の)責任はもちろん、私にもある」と言い、覚悟も備わっている。

 「軽々しくは言えないですが、何よりもまず、いい作品をお届けすることを考えてきたい。『すみれも頑張っているから私も頑張ろう』と思ってもらえるように」と続けた。引っ込み思案なヒロインが成長するように、芳根自身も変化を遂げている。