世界中のファンを魅了してきた宮崎アニメは、もう見られないのか。スタジオジブリは1日、宮崎駿監督(72)の引退を表明した。

 温かでヒューマンな作風はアニメを芸術に高めた名匠で、改憲反対など社会的な発言で注目を集めたこともあった。

 宮崎監督は学習院大卒業後に東映動画に入社。高畑勲さんらとテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」などの秀作を手掛けた。映画監督デビューは1979年の「ルパン三世

 カリオストロの城」。現代文明批判をモチーフにした「風の谷のナウシカ」(84年)は大人にも受け入れられ、ファン層を広げた。

 85年からスタジオジブリを製作拠点に「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」など夢にあふれた「宮崎アニメ」でファンを魅了した。97年の「もののけ姫」は空前のヒットとなり海外でも話題を集めた。

 2001年の「千と千尋の神隠し」は独自の世界観と深いテーマ性でアニメを芸術に高めたと評価され、ベルリン国際映画祭の最高賞「金熊賞」と米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞し、その名を世界に響かせた。

 東日本大震災後の11年6月、東京都小金井市の同社屋上に「原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と横断幕を掲げさせたことも。今年7月にはジブリ発行の冊子で「憲法を変えようなんてもってのほか」などと発言し、話題となった。

 最後の作品となった「風立ちぬ」では、製作後のインタビューで「地震はあるし、原発もなくならないし、その中でどうやって生きるかが、今自分たちに問われていることだ」と語った。