俳優佐々木蔵之介(58)がこのほど、京都市右京区の東映太秦映画村で、主演映画「幕末ヒポクラテスたち」(緒方明監督)の公開記念イベントに登壇しました。佐々木は時代劇の面白さを「所作」の観点から言葉にしました。

時代劇の自由は、不自由から始まります。佐々木は、京都の撮影所で所作をたたき込まれる過程を振り返り、「京都撮影所に来る時にビビったっていうか、本当に怖かったのは、自分にできるのか、衣装を着せてもらうのにこれでいいのか、と。本当に最初は怖かったんです」と率直に打ち明けました。

それでも、教わりながら「型」を1つずつクリアしていくことで感覚が変わっていったといいます。

「丁寧に教えてくださるんで……。でも、時代劇でちょっとそこさえやれば、ものすごく自由に芝居ができる。現代劇よりもっと自由なんですよね」

さらに、表現の幅についても踏み込みました。

「時代劇の方がもっと、うねった感情も作れる」

所作は動きを縛るためのルールではなく、感情を大きくうねらせても破綻(はたん)しないための土台になります。佐々木が「だからこそ自由が獲得できる」と言うと、緒方監督も「不自由だけど、何をやってもいい」と応じ、会場の空気が和らぎました。

佐々木は、衣装とかつらをつけた瞬間の“切り替わり”についても触れました。

「普段こうやって普通の洋服を着てますけど、ふっと着物に着替えて、『おはようございます』って半分カツラにしてやってきた時に、これはもうできたなって思うんですよね。入り方も含めて」

時代劇モードに入ることで、呼吸や視線、入り方までが自然と切り替わるといいます。その切り替えこそ、所作がもたらす最大の効用なのでしょう。

所作は京都の撮影所で培われ、受け継がれてきました。佐々木の言葉は、所作が単なる「伝統」ではなく、いまなお俳優に新しい自由を与える「技術」であることを示していました。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)