【ニューヨーク9月29日(日本時間同30日)=瀬津真也】歌手和田アキ子(58)が、デビュー40周年記念の海外初コンサートを、ブラックミュージック(黒人音楽)の殿堂アポロシアターで行った。同会場の約140年の歴史で東洋人として、初のソロライブ。持ち前のソウルフルな歌声で、リズム&ブルースの魂を爆発させ、1450人札止め満員の観衆を酔わせた。

 泣き顔のアッコは、長い両手を目いっぱいに広げて叫んだ。「アイ

 ラブ

 ニューヨーク!」。

 感激のスタンディングオベーションでアンコールを出迎えてくれた観衆に「今夜で声がかれてもいい」と、力の限りを振り絞り、最後の曲を歌った。10年前の98年。紅白歌合戦の大トリで、マイクなしで歌った「今あなたにうたいたい」を再現した。敬愛するレイ・チャールズと同時代を生きたサム・ムーア(72=サム&デイブ)を招き、地元の黒人聖歌隊の協力を得て、数々の黒人ミュージシャンたちの汗と涙が染み込んだアポロシアターに、生声を響き渡らせた。

 和田

 歌手にとっての本当の幸せは、賞をもらうことでも、ランキングに入ることでも、スターと呼ばれることでもない。私の歌を聴きに来てくださる人がいることです。

 初めての海外ステージにもかかわらず、在米邦人を中心に、チケットが完売になるまで観客が詰めかけた。目の前で感激の涙を流し、拍手をくれたことが、何よりうれしかった。

 夢の舞台だった。海外ライブの構想が浮上した昨年秋、当初は格式高いカーネギーホールが候補だった。しかし、アッコは自分の原点を振り返った。「レイちゃんの音楽、黒人のR&Bを聴いたから、歌手和田アキ子が生まれた。同じステージに立ちたい」。加えて「ミナミの不良アコから、上京して夢をかなえた」という雑草魂が、アポロシアターへと思いを駆り立てた。かつて、米国南部の貧しい黒人たちが、ニューヨーク・ハーレム(黒人街)の同会場を目指した姿と、重ね合わせていた。「My

 Dream

 Has

 Come

 True(夢がかなった)」と、英語であいさつした。

 「明日からどうしよう」と燃え尽きた。ただ、今後を生きる1つの目的も見いだすことができた。

 和田

 夢を追う若者たちに、この気持ちや経験を伝えていきたい。だから、デビュー50、60年でも赤いマニキュアをして、葉巻を吸いながらブルースを歌い続けるよ。