<舞台「ムサシ」W主演対談(上)>

 活況の日本の演劇界の中でも、注目を集めている作品がいよいよ開演する。藤原竜也(26)と小栗旬(26)がダブル主演する「ムサシ」。脚本は井上ひさし氏(74)、蜷川幸雄氏(73)の演出のもと、藤原が宮本武蔵、小栗が佐々木小次郎を演じる。蜷川氏の秘蔵っ子として、舞台での評価が高い、同い年の若手俳優2人の対談を25日から3日間にわたって緊急連載。初回は、6年ぶりの再共演について語ってもらった。【構成・瀬津真也】

 2人の共演は03年の舞台「ハムレット」以来。15歳の時に蜷川舞台で主演デビューするなど“常連”の藤原が主役で、蜷川作品初出演の小栗は藤原演じるハムレットの死後に、少しだけ出演するフォーティンブラス役だった。舞台上での絡みすらなかったが、時が流れついに小次郎と武蔵として激突するのだが…。

 小栗

 がっかりです!

 藤原

 ブハハハッ。

 小栗

 当時の小栗旬が見た藤原竜也は、すごくストイックで大きな存在だった。でも、6年間で過大にイメージしてたみたい。実際は、超いいかげんなヤツでした。

 藤原

 無駄な6年だったね。えっ?

 小栗ですか?

 汚い!

 芝居も私生活も(笑い)。僕らでどんな化学反応が起きるか楽しみにしてたけど、逆に染まりそうで、けいこ場でも距離を置いてるんですよ…ってまぁ、冗談です。僕が絶対的に手を触れていない芝居をすんなりとする人。そんな小栗とゼロから作り出すことが楽しい。

 小栗

 演劇的な振る舞いは、やっぱり竜也には及ばない。かわすとかユルい感じの芝居は僕が得意で、竜也は真っすぐな芝居がすごい。オレらがフュージョン(融合)したら、お互いのできない部分を補え合えると思う。

 藤原

 全く違うね。もう、芝居やキャラクターから違う。それが面白いし、それを脚本家の井上先生がよく見ていてくれてる。面白い小次郎と武蔵で、そのセリフを掛け合っている。本当にそのまんま小栗と藤原って感じなんです。

 お互いの舞台を見合うなど、公私ともに仲の良い2人は、認め合う言葉も直球だ。

 小栗

 今回の出演の最初の決め手は、やっぱり藤原竜也と共演させてもらえることだった。

 藤原

 小栗にはね、ある種の潔さを感じているんです。けいこ場にすべてを捨てて来ている。それはこっちを気持ちよくさせて、現場にはいい風を吹き込んでくれる。それを感じて、僕の中でもがっつり入っていけるようになった。僕には特別な共演者です。

 武蔵と小次郎という究極のライバル関係を演じるが、親交が深くとも、同じ26歳の同業者。対決心や嫉妬(しっと)心はないのだろうか。

 藤原

 けいこ中にすごいなとは思わないよね。向こうが仕掛けてきた芝居や、つくり上げてきたことに対して、自分をどこまで持って行けるかということ。

 小栗

 竜也も含めて今回のメンバーは「親しき仲にも礼儀あり」の家族みたいな感じ。バカ話で砕けることはいつでもできる。でも、誰しもが「お前油断したら、1人だけ後れ取っちゃうよ」みたいな空気を絶対に持っている。それがすごくいい緊張感を生んでるんです。

 指導を受ける蜷川氏の声に真剣な表情で向き合うけいこと、終了後に和気あいあいとした言葉のキャッチボール。2人の会話からは、充実の日々が感じられた。

 ◆藤原竜也(ふじわら・たつや)本名同じ。1982年(昭57)5月15日、埼玉県生まれ。蜷川幸雄演出「身毒丸」の主演オーディションで選ばれ、97年ロンドン公演で舞台デビュー。「唐版滝の白糸」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」など蜷川作品のほか、野田秀樹演出「オイル」に主演。主演映画「バトル・ロワイアル」「デスノート」が大ヒットし、04年NHK大河「新選組!」に出演。178センチ、血液型A。

 ◆小栗旬(おぐり・しゅん)本名同じ。1982年(昭57)12月26日、東京生まれ。小6で児童劇団に入団。95年のNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」でデビュー。連ドラ「貧乏男子」「花より男子」などに出演し、映画は「あずみ」「キサラギ」「クローズZERO」、舞台「カリギュラ」がある。父小栗哲家氏はボローニャ、ウィーン国立歌劇場の日本公演を手掛ける舞台監督。183センチ。血液型O。

 ☆「ムサシ」は、3月4日から4月19日までさいたま市彩の国さいたま芸術劇場で、4月25日から5月10日まで大阪梅田芸術劇場で、約2カ月間で全74公演が行われる。約6万枚の前売り券は発売開始80分で完売。物語は、巌流島決戦の後の武蔵と小次郎を描いたという異色作で、共演者は鈴木杏、白石加代子ら。蜷川氏は「武蔵は竜也で、小栗は小次郎とすんなり決まった」と2人のハマり役を確信している。

 [2009年2月25日13時54分

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