都内のマンションで合成麻薬MDMAを使用したとして、麻薬取締法違反罪に問われた俳優の押尾学被告(31)の初公判が23日、東京地裁(井口修裁判官)で行われた。押尾被告は起訴事実を認め、現場で一緒にいて死亡した飲食店従業員田中香織さん(享年30)からMDMAをもらって飲んだと述べた。検察側は押尾被告が田中さんと会う直前に送ったメールの内容から、供述内容の矛盾を突き、MDMAの常習性を疑う場面もあった。検察側は懲役1年6月を求刑。11月2日に判決が言い渡される。

 押尾被告は過去に3回、米のクラブでMDMAを使用したことを明かし、今回は死亡した田中さんからMDMAをもらって1錠飲んだと話した。田中さんが死亡した日に3回、MDMAを飲んだのを見たという。さらに、押尾被告は、田中さんが過去に薬物を使っているのを見たことがあると述べ「体に悪いから止めた」と話した。押尾被告は、取り調べから一貫して田中さんがMDMAを持ってきたという主張を曲げなかった。

 しかし、検察側が押尾被告への尋問の終盤に突きつけたのは、1通の携帯電話のメールの写真だった。文面は「来たらすぐいる?」。押尾被告が、田中さんと会う直前に送ったメールだ。検察官は、押尾被告に「すぐいる?」の「いる?」は「MDMAがいる?」を指しているのではないか、追求し始めた。

 検察官「女性からの返信は?」。

 押尾被告「…」。

 検察官「『いる』ではありませんか」。

 押尾被告「はい…」。

 検察官「『すぐいる?』とはどういう意味ですか?」。

 押尾被告「僕自身のことです。薬の話ではありません」。

 検察官「こんな言い方、するんですか?」。

 押尾被告「2人しか分からないやりとりです」。

 検察官「あなた(押尾被告)が欲しいかということですか?」

 押尾被告「そういうことです」。

 検察官「取り調べでは違うことを言っていましたよね」。

 押尾被告「ここでは言いにくいことなので」。

 検察官「それは、陰茎のことですか?」。

 押尾被告「はい」。

 検察官「すぐ陰茎が欲しいとのことですか?」

 押尾被告「はい」。

 押尾被告は「いる?」は、あくまでも「セックス」の意味であると主張。しかし、検察もさらに厳しく質問をたたみかけた。

 検察官「普通、『いる』というのは物のことを言うのではないですか」。

 押尾被告「人によってとらえ方は違う」。

 検察官「セックスは『やる』『する』と言うのではないですか」。

 押尾被告「意味は一緒です」。

 検察官「あなたが会う直前にこういうやりとりをして、女性が来たらMDMAを服用した」。

 押尾被告「はい」。

 検察官「あなたが用意したのではないですか」。

 押尾被告「違います」。

 厳しい質問が矢継ぎ早に飛んだが、押尾被告は最後まで「セックス」の主張を曲げなかった。

 田中さんがMDMAを服用し容体を悪化させてから、押尾被告は2人の知人を呼び「MDMAを抜く薬が欲しい」と訴えたことも明らかになった。押尾被告は「発覚が怖かった」と話した。また、田中さんの容体悪化から119番通報するまでの「空白の3時間」ついては、今回の法廷で追及されなかった。

 検察側は、押尾被告の毛髪50本を採取し、MDMAの反応が出たことを明かしている。検察側は「MDMAを違法と知って飲み込み、毛髪からも成分が検出されており常習性が顕著。女性が死亡した後、『抜く薬はないか』と聞くなど、隠滅を図っている。『来たらすぐいる?』のメールも、こじつけの弁解」と懲役1年6月を求刑。弁護側は「女性からもらってやったもの。被告の自宅、所持品からもMDMAを含む麻薬は押収されていない。常習性まではない」と話した。判決は11月2日に言い渡される。

 [2009年10月24日9時0分

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