英歌手ポール・マッカートニー(71)が21日、11年ぶりの来日公演を東京ドームで締めくくった。9日に来日し大阪、福岡と3都市6公演でファン約26万人を魅了した。この日は故ジョン・F・ケネディ元大統領の長女、キャロライン・ケネディ新駐日大使(55)がプライベートで来場するサプライズも。ポールは滞在中に相撲見物をしたこともあってこの日、大相撲九州場所の結びの一番に懸賞金を出した。

 「アイシテマス、トウキョー」「サイコウ、サイコウ。アリガトー」。6公演目となると日本語も流れるように飛び出す。来日ツアー初日の大阪公演と同じセットリスト(曲目)に戻し、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」で始まる最終公演の幕が開けた。

 開演と同時に盛り上がる場内にケネディ駐日大使の姿があった。黒のシックなパンツスーツに身を包み、アリーナ席11列目に着席。気付いた周囲の観客から大歓声が上がると、大きく手を振って応えた。1曲目から立ち上がり、曲を口ずさみながらポールの歌声に酔いしれていた。途中からジャケットを脱いでステージに視線を注いでいた。

 ポールとケネディ家はある「因縁」で結ばれている。ケネディ大統領がテキサス州ダラスで凶弾に倒れたのが63年11月22日。ビートルズの初渡米は翌年だった。事件の暗い影を引きずる全米を明るい歌声で照らしたのがビートルズ。両者に直接の交流はないが、全米で沸騰した人気が語られる時、背景に暗殺事件との関係に触れられることが多い。当時、ヒーローを失った米国に現れた救世主とたたえる人たちもいた。

 26曲目ではポールの「イッショニ

 ウタイマショウ」の掛け声で「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」を観客と大合唱。ケネディ大使も体でリズムを取って楽しんでいた。ステージ上で大音響の火柱が何度も上がると、驚いたような表情も見せた。実はポールとケネディ大使は旧知の間柄。公演前に楽屋で談笑し、再会を喜ぶ姿があった。多忙な大使はアンコール前の最後の曲「ヘイ・ジュード」の途中で退席したが、2時間以上にわたって貴重なオフタイムを楽しんだ。

 5月に始まったワールドツアー「アウト・ゼアー」は日本公演まで6カ国26公演で100万人以上を動員。世界を席巻してきた勢いそのまま、11年ぶりに日本に上陸。3都市で計6公演。ロック界のレジェンドは、この日までに約26万人を魅了し、最高の思い出を届けた。【松本久】<ポール・マッカートニー来日アラカルト>

 ▼来日

 9日、英ロンドン発のチャーター機で関西空港に。ナンシー夫人とスタッフが用意した法被姿でファンに笑顔。

 ▼公演初日

 「11月11日に11年ぶり日本ツアースタート」にちなみ、京セラドーム大阪の来場者のうち11人と対面した。

 ▼大相撲

 14日に九州場所5日目を観戦。升席で2時間半、玉ノ井親方(元大関栃東)の解説付きで結びまで見届けた。場内からポールコールがわき起こる一幕も。

 ▼最年長

 18日から東京ドーム3公演。71歳5カ月は09年サイモン&ガーファンクルの平均68・7歳、11年小田和正の64歳9日を上回った。

 ▼招待

 東日本大震災被災者10人を18日の公演に招待、対面した。各会場で「レット・イット・ビー」や「イエスタデイ」の歌唱前に「被災した方にささげます」と語った。

 ▼動員

 3都市6公演で約25万7500人。