歌手石井竜也(54)が、8月16日に行われる「2014神宮外苑花火大会」(日刊スポーツ新聞社主催)に出演することが26日、決定した。ゲスト歌手として秩父宮ラグビー場のステージに立つ。花火大会では前代未聞となる、豪華メドレーを含めた20曲近くを披露する。意気込みの裏にある、故郷茨城復興の思いを明かした。

 お祭り騒ぎはお手のものだ。「盛り上げられるパッケージ(演出)は持っているつもりなんで、皆でバカ騒ぎしちゃいましょう。米米CLUBからソロ曲まで、いいとこどりメドレーで盛り上げます。ラテン系、ディスコ系、盆踊り系まで。皆が花火上がる前から踊りだしちゃうようなノリでね」。現在もボーカルを務める米米CLUBを82年に結成した時から、ライブのエンターテインメント力はずばぬけている。「衣装もど派手。54歳がやるようなライブじゃないから」と笑いながら明かした。

 秩父宮ラグビー場会場は、東日本大震災の茨城復興を支援する。実家は、福島との県境付近にある北茨城市の海岸線。100年以上続いた老舗和菓子店だが「7メートルの津波で実家はやられちゃった。液状化現象で家の下にはぽっかり空洞ができちゃって、危険で住めなくなってしまいました」。子供のころ泳いだ海も、遊び回った街も、すっかり様変わりしてしまった。

 80歳近くの母は、車で移動中地震に遭い、すぐ背後を走る車には電柱が倒れた。間一髪だった。「すぐ東京から駆けつけようとしたけど電車は不通だし、タクシーは皆、行き先を茨城というと拒否された。3日間安否が確認できなくてね」。

 父が他界したばかりで母までもかと、絶望していたという。無事だった母は今、米米メンバーで妹MINAKOの都内宅に身を寄せているが「やっぱり帰りたいって言いますから」と時々は実家にも戻らせる。ただ「もう思い出が残ってないんだ。おじいちゃんのお使いで通ったたばこ屋はないし、酒屋も何もない…」。復興どころか日に日に廃れている故郷にやりきれない思いは募るばかりだ。

 歌手にできることが限られていても、やり続ける。今回も花火大会の趣旨に賛同して出演を決めた。「とにかくバカ騒ぎが得意ですから」。古来「祭り」とは、慰霊や鎮魂の意味で行われてきた。深い思いを胸に秘めて“お祭り騒ぎ”をする。【瀬津真也】