「2014神宮外苑花火大会」(日刊スポーツ新聞社主催)が16日、東京・神宮球場や秩父宮ラグビー場などで開催された。神宮では玉置浩二(55)らが、35回記念大会にふさわしい一夜の歌祭りを華やかに盛り上げた。来場者は6会場で計約8万6000人。雨も開演直後にやみ、周辺を含めると約39万人が約1万発の夏の風物詩を楽しんだ。

 雨がやみ、涼しい風が吹く球場に、独特の深みのある歌声が響き渡った。28年前、井上陽水(65)とともに神宮球場で歌った「夏の終りのハーモニー」。瞳には、涙が浮かんでいた。

 「この神宮球場で、井上陽水さんと初めてこの曲を歌った時、僕は28歳。今はもう星になった戦友たち、いまだに僕と夢を追い掛けてくれている仲間。何より陽水さんに、敬意を表して。1人ではありますが、心を込めて歌います」

 日が暮れたスタジアムは、大歓声に包まれた。

 玉置が同球場でライブを行うのは、ロックバンド安全地帯のボーカルとして、86年8月に井上と歌って以来。今回はソロでの出演だ。「陽水さんにも事前に報告しました。リハーサルから万感の思いでしたよ」。当時、陽水とのコラボ曲「夏の終りのハーモニー」を手掛けたプロデューサーは、3年前に亡くなったという。本番直前には「28年間でいろいろなことがあったけど、愛はどこにもいかない。少しでも、感動を与えられるような歌をお聴かせできたらいいですね」と話し、集中力を高めていた。

 この日は白い鉢巻き姿で「カリント工場の煙突の上に」「いつの日も」などを歌った。代表曲「田園」歌唱時は平均年齢15歳の女性グループ、Little

 Glee

 Monsterのコーラスをバックに、アコースティックギターをかき鳴らした。

 「愛はここにある

 神宮球場にもある~」

 浴衣姿の来場者たちは立ち上がり、頭の上で大きく両手をたたいた。

 「当時の陽水さんや、28歳の時の自分自身にもちょっと会えた気がします」。亡くなった仲間、恩人や友人たち、こよいのうたげをともにした観客、そして自分自身へ。玉置のステージは、いつまでも変わらない愛であふれていた。【横山慧】