第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が5日決定し、西田敏行(64)が「ステキな金縛り」「はやぶさ/HAYABUSA」「探偵はBARにいる」で助演男優賞に選ばれた。個人賞は93年の「学校」での主演男優賞以来18年ぶりだ。キャリアを重ねてきたが、いつも初心でいる。それは「おもしろい役者」でいることだという。また、今年は故郷の福島が東日本大震災で被災。これまで何度も被災地に足を運んできた。今後も初心でいることと、役者としての使命を務めることを誓った。

 西田は「うれしいですよね。ありがたいです」と喜び、46歳で主演男優賞を受賞して以降を振り返った。

 「年を重ねるにつれ、実年齢に近いオファーが増え、無理やりに役をこさえるというより『そのままでやってくれればOK』ということが多くなりました。逆に難しいんですが、クリエーティブな気持ちを持ち続けることができて、役者としてのありようを見つめ直せたと思います」

 西田には、40年以上のキャリア通じ、一貫して持ち続けている「命題」がある。70年の初舞台「情痴」で「西田敏行という俳優がおもしろい」と劇評に書かれた。「初舞台で思いついたまま演じたら、客席がざわつきました。劇評を見た先輩俳優たちに『おもしろい役者を引き受けろ』と言われました。もちろん、笑わせるという意味ではありません。存在がおもしろいとか、変だなとか、そういうことも含めてのおもしろい、です。(初舞台の)客席のざわつきをよすがに、役者をやってきました」と語った。40年以上、ずっと初心なのだ。

 西田は「クリエーター」という言葉を使って、自分の仕事を表現する。「物を作っているという意識をいつも持っていますし、それがモチベーションを支えている」と言う。映画の現場は、クリエーターであることをより明確に実感する場所なのだそうだ。

 今度は、東日本大震災で被災した人々の復興、復旧へのモチベーションを支えたいと思っている。故郷の福島県をはじめ、被災地には何度も足を運んできた。「つぶさにいろんな人に会って、声を聞いています。手を握るだけで表情が変わることもある。この仕事をやっていて良かったという思いを強くしました」。【小林千穂】

 ◆西田敏行(にしだ・としゆき)本名同じ。1947年(昭22)11月4日、福島県郡山市生まれ。明大農学部は1日で中退し、日本演技アカデミーへ。青年座養成所に入り、71年「写楽考」の主役、73年のNHK「北の家族」で人気に。ドラマ「池中玄太80キロ」「八代将軍吉宗」など、映画「植村直己物語」「敦煌(とんこう)」「釣りバカ日誌」シリーズなど。168センチ、血液型B。