第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が6日、決定。吉永小百合(67)が、12年ぶり3度目の主演女優賞を受賞した。「北のカナリアたち」(阪本順治監督)で、苦しみを20年間抱え続けた教師を抜群の存在感で演じた。教え子を演じた俳優たちとの共演場面では、映画界の将来を支える若手たちを引き立てる、物語の進行役というもう1つの役割も担った。女優生活55年を迎えてもなお、新境地を切り開いてみせた。
初めての感情が吉永の胸の奥に湧き上がった。「主演女優賞をいただいていいのかしら。心苦しい」。理由があった。「誰か1人が欠けてもこの映画はできなかったですから」。
助演男優賞を受賞した森山未來(28)をはじめ、満島ひかり(27)勝地涼(26)宮崎あおい(27)小池栄子(32)松田龍平(29)の教え子役6人と共演した。映画中盤、20年前に離れたかつての教え子たちを訪ね歩く場面がある。次代を背負う若手たちをスクリーンの中央に据えた。「教え子の思いを聞き取るナビゲーターという感じ。出過ぎず受け止めることに徹しました。2役やらせてもらった思いです」。サスペンス要素も含む展開のストーリーテラーも担った。「自分の世界が広がったと思います」。
6人の姿勢に胸打たれた。昨年11月の製作発表会見では緊張している様子を感じたが、3日後のクランクインでは教え子になり切っていたという。自分が合唱を指導した設定だった。「6人は自分たちの20年前を演じる子供たちの合唱を聞き、スタジオを借りて歌を練習し撮影までにしっかり作ってきて驚きました。私の方がしっかりしなきゃという気持ちでした」。
北海道の利尻や礼文島のロケ撮影は冬2カ月、夏1カ月に及んだ。冬の撮影では体感温度マイナス30度の日もあった。共同生活は一体感を生んだ。冬の撮影の打ち上げでは6人と礼文町の公民館で食事した時に「別れたくない」と思った。共演者やスタッフの誰1人が欠けても成り立たない。一緒に作り上げた感触を得た初めての経験だった。
先のことは考えられないという。「次へ向かうのは大変。この作品をしっかり自分の中に収めないと」。周囲はすぐに次回作を期待するが「より深く演じるためにどうすればいいか、自分の中に栄養を取り込まないといけない」という。「大きな課題も出来ました。パーフェクトになると引退ですが、課題があるから、また新しい1歩を踏み出せます」。
12年に1度めぐってくる主演女優賞。女優として育てられた日活の100周年の節目での受賞には「とても光栄」と笑みを浮かべた。【村上幸将】
◆北のカナリアたち
日本最北の島にある麗端小学校岬分校の教師、川島はる(吉永小百合)と生徒6人の間で悲劇的な事故が起きた。はるは夫を亡くして島を追われ、「天使の歌声」を持つ6人の生徒もまた罪の意識を抱えて生きていた。20年後、はるは都内の図書館で司書をしていたが、教え子の鈴木信人(森山未來)が事件を起こしたと知る。はるは北海道へ渡り、教え子を相次いで訪ねる。
◆吉永小百合(よしなが・さゆり)1945年(昭20)3月13日、東京都生まれ。59年「朝を呼ぶ口笛」で映画デビュー。62年「キューポラのある街」でヒロインを演じ、同年「いつでも夢を」で日本レコード大賞受賞。06年に紫綬褒章。84年「天国の駅」と「おはん」、05年「北の零年」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。




