リオデジャネイロ五輪から締め出された陸上女子棒高跳びの女王、イシンバエワ選手(34)のコーチ、エフゲニー・トロフィモフ氏(72)は28日、共同通信に対し「大会に出られないのに練習を続けるのはばかげている」と述べた。1児の母で、選手としての年齢が高いとも指摘、現状では引退すべきだとの考えを示した。選手自身も38歳となる東京五輪出場は困難との見方を示しており、引退の可能性が高まっている。

 ロシア陸連は昨年11月、ドーピング問題で国際陸連から資格停止処分を受け、国際大会への出場やロシアでの大会開催を禁じられた。国際オリンピック委員会(IOC)は24日、国際陸連の処分を追認。トロフィモフ氏は「完全な孤立だ」と憤慨。選手が国際大会から排除された結果、若い世代が目標を失い、陸上競技から離れていくと強調した。

 またドーピングをしていないイシンバエワ選手に連帯責任を負わせるのは、人権侵害であり「推定無罪の原則をないがしろにしている」と批判。リオに行けない同選手が27日、選手団の壮行会に出たのは、選手を「差別」から守るようプーチン大統領に直訴する目的だったと説明した。

 トロフィモフ氏は女子棒高跳びの世界記録保持者であるイシンバエワ選手の引退後、選手の出身地のロシア南部ボルゴグラードで同選手の名を冠した棒高跳びの学校をつくりたいと考えてきた。しかし「若者は誰も陸上競技をやりたがらなくなった。コーチもフィットネスクラブなどに転職し始めている」と窮状を訴えた。

 またドーピングの報道にすぐ対応せず、問題が大きくなるのを放置したとして、ロシアのスポーツ界の幹部に責任があると非難した。