歴史的な空砲に終わった。0-1の前半9分にFW興梠慎三(30=浦和)がPKで大会初得点を決めると、海外組のMF南野、FW浅野が続く。FW久保の招集断念に伴い、バックアップメンバーから昇格したFW鈴木も得点したが、届かなかった。日本の五輪史上最多の4得点を奪った攻撃を、背水のコロンビア戦でも継続する。

 これだけ決めても勝てないのか-。攻撃陣は日本の五輪通算32試合目にして最多の4得点を奪ったが、届かなかった。先制点を献上した3分後に興梠がPKを決め、今大会1号。鋭い裏への飛び出しでファウルを誘ってPKを獲得した南野が、すぐキッカーに指名されていた興梠にボールを託して追いついた。1-2の前半11分には、MF大島のスルーパスを受けた南野。GKの股下を射抜いて再び振り出しに戻した。

 「得点の形は、僕たちのやりたい形で取れた部分が多かった。それは手応えとして感じている」。南野が口にした通り、3点を追う後半25分には藤春の左クロスを浅野が左足ヒールで流し込んだ。14年のチーム発足以来、必ず練習に組み入れてきたサイド攻撃で点差を縮め、浅野は「試合後のロッカールームでテグさん(手倉森監督)が『4点も取れるチームなんだから、失点を減らせば絶対に勝てる』と言っていた。その通り」と次戦へ切り替えた。

 後半ロスタイムには、電撃的に正メンバー18人に昇格した鈴木が決めた。バックアップメンバーとしてブラジルに到着してから、わずか3日後。絶妙な切り返しからの左足シュートだった。「チームのサポートをしようと思って来たら、急に登録になってゴールまで…。自分としても驚きの数日間」。同学年の久保がヤングボーイズから招集を拒否された。泣いて悔しがったエースの思いを背負い、スイスは深夜だったためハイライト映像で試合を確認した久保に得点を届けた。

 ナイジェリアに敗れた96年アトランタ大会と08年北京大会は1次リーグ敗退だが「じゃあ今回も、とはいかない。負の歴史を覆す」と手倉森監督。96年大会以降、初戦で敗れた国の1次リーグ突破率は20%と低い一方、1試合4得点した8チームはすべて突破したデータもある。興梠は「0-5だったら大丈夫か…と不安になったけど、いい形で点を取れている」。負ければ敗退の次戦コロンビア戦では笑顔のゴールを狙う。【木下淳】

 ◆スコア4-5

 日本が五輪で1試合4得点は過去7度の3得点を上回り最多。現行の大会方式となった96年大会以降、1次Lで1試合4得点以上は過去に8チームが記録し、いずれも1次Lを突破している。一方、4失点以上の過去8チームはいずれも1次L敗退。今回の試合で4得点5失点の日本は?