<W杯アジア2次予選兼アジア杯予選:日本3-0シリア>◇E組◇8日◇オマーン・マスカット

 読者のみなさんは前半、相当いらいらしただろう。パスがつながらない、テンポも遅い。ミスが目立ち、格下シリアに思うような攻撃ができない。ただ、経験者の立場で言わせてもらうと、中東での試合は容易ではない。W杯フランス大会予選でUAEとのアウェー戦を経験しているが、体が思うように動かないのは事実だ。

 試合直後から、日本代表選手のユニホームは汗でぬれていた。35度。涼しくなった日本や欧州でプレーしている選手たちが、3日間の調整で気温に適応するのは難しい。しかも芝が長く、水もまいてくれない。当然ボールは走らない。ほとんどの選手が顔を下げてプレーしていた。普段はボールを受ける前に周りを見渡す余裕があるが、ピッチ状況が悪くミスを減らすため、自然とボールに目線がいくことが多い。そのため、日本得意のワンタッチパスもうまくできなかった。

 シリア戦は後半に相手の足が止まったため、楽になった。しかし最終予選で対戦の可能性があるイラン、イラク、UAEなどは足が90分持つだろう。その時の打開策、たとえば攻撃のオプションを増やしておかないと、シリア戦の前半45分の戦いを、今度は90分間続けることになるかもしれない。(日刊スポーツ評論家)