<高校サッカー:鹿児島城西5-3前橋育英>◇10日◇準決勝◇埼玉

 鹿児島城西のFW大迫勇也(3年)が、前人未到の2ケタ得点に王手をかけた。前橋育英(群馬)に2-3とリードされて迎えた前半43分、ゴール前に飛び込んで右足で同点ゴールを決め、通算9得点として平山相太らの持つ1大会最多得点記録に並んだ。J1鹿島入りが内定しているエースの5試合連続得点でチームも勢いづき、5-3の逆転勝ちで初の決勝進出。チームでも1大会通算得点を27に伸ばし、大会最多記録を更新した。広島皆実(広島)は鹿島学園(茨城)に1-0で勝ち、広島県勢40年ぶりに決勝に進んだ。両校は12日の決勝(国立競技場)で頂点を目指す。

 勝利の瞬間、「怪物」の表情に安堵(あんど)感が漂った。大会9点目の得点より、決勝進出の喜びが体を満たした。点の取り合いとなった激戦を制し、大迫勇は「取り合いになれば勝てると思っていた。自分はよくなかったけど、勝ててよかった」と振り返った。

 不調だった。「試合の間が空いて体が動かず情けなかった」。体の重さに加え、前橋育英の巧みな守備の前に前半16分までは満足にボールにさえ触れなかった。チームもFW野村の得点で先制しながら、前半14分で1-3とリードを許した。それでも大迫勇は下を向かず「落ち着けば大丈夫」と、チームメートを励まし続けた。

 そして、不調の中でもエースの仕事は果たした。2-3で迎えた前半43分、DF松井の左からのクロスに反応。ニアに走り込んで右足で合わせ、同点弾を突き刺した。「パスを呼び込んだら、イメージ通りパスがきて決めるだけだった」。5戦連発の9点目。個人最多ゴール記録に並ぶ1発で、試合の流れも変えた。

 忘れられない1敗がある。昨年9月の全日本ユース準々決勝の浦和ユース戦で0-3の惨敗を喫した。「あの時は本当にコンディションが悪くて、結果が出せなかった」。無得点に終わったことよりも、チームの勝利に貢献できなかったことが情けなかった。だから得点を量産している今大会期間中も、部員に義務づけられているサッカー日誌に「悪い流れの時に、まだチームを引っ張れていない」と反省点を記していた。「自分はよくなかったけど、点を決めればチームのためになると思った」。そのフォア・ザ・チームの思いが、逆転を呼び込むゴールにつながった。

 石黒、平山に並ぶ1大会最多9点目のゴールは、1大会チーム最多記録となる25点目のメモリアルゴールでもあった。「(平山の9得点は)テレビで見てましたけど、記録は特に関係ないです。点を取れているのもチームのおかげ。決勝は今のチームで最後の試合なので、しっかり点を取ってチームの勝ちにつながればいい」。広島皆実との運命の決勝戦。大会記録となる10点目のゴールを挙げ、仲間を日本一の栄冠に導く。【菅家大輔】