日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(63)が、「時差ボケ」の早期解消へ、新兵器を導入した。今日3日に行われる、W杯アジア2次予選カンボジア戦(埼玉)の公式会見で明かした。携帯オーディオプレーヤー型の光照射装置で、短時間で日光浴の効果を生むことで、体内リズムを整える効果がある。帰国後時差ボケに悩む欧州組だけでなく、アジア予選ならではの長距離移動に疲弊するチーム全体にとっても、心強い味方になりそうだ。

 カンボジア戦を前にした公式会見。ハリルホジッチ監督はW杯予選初勝利への方策を、熱っぽく語った。「確固たる決意でシュートを打ってくれと求めている」「相手を崩すためのソリューション(解決策)を6、7つ、選手には伝えている」。そんな強い言葉のはざまで、実は意外な「秘策」も明かしていた。

 「海外から帰ってきた選手には時差ボケ、疲労がある。ただ、これを解消するための道具を試している」。主力がプレーする欧州から遠い日本にとって、慢性的な問題、時差ぼけ。これを解消しうる、夢のような器具が、現場でテストされているのだ。

 選手たちが装着している様子から、フィンランド製の睡眠改善補助装置「VALKEE2」とみられる。携帯オーディオプレーヤーのような外見。しかしイヤホンからは、音ではなく光が放たれる。

 脳に直接光を照射することで、短時間で日光浴をしたような効果があるとされる。これにより、昼夜が逆転してしまう時差ぼけの症状を、通常よりかなり短い時間で解消できる効果が期待できるという。

 今回の合宿を前に、日本協会のメディカルスタッフが、ハリルホジッチ監督にこの器具をプレゼン。指揮官も強い興味を持ち、すぐに導入が決まった。

 効果が出れば、助かるのは欧州組だけではない。カンボジア戦終了後、チームはユーラシア大陸を横断し、イラン・テヘランへ。中4日で同予選アフガニスタン戦に臨む。時差4時間半、移動には日をまたいで17時間を要する。

 体内時計が狂いに狂わされる。世界の舞台で実績を残してきたハリルホジッチ監督にとっても未経験の、アジア予選ならではの試練だ。それでも指揮官は「とにかく勝つ」と語気も強い。前日まで2日連続の非公開練習は就任以来初。加えて新しい装置も導入し、万全の体制で勝利を狙う。【塩畑大輔】

 ◆VALKEE2(バルキー2) イヤホンのLED光照射装置で、耳の穴から脳の光受容細胞に高照度の光を当てる。12分間で長時間日光浴を行ったのと同じ効果が得られる。人間は太陽光を浴びることで体内リズムを整えているため、日照時間が短い北欧では、日光浴不足で体調不良やうつになるケースが多かった。その解消のためにつくられた器具だが、睡眠改善や時差ボケ解消の効果も望めることもあり、最新モデルは音楽プレーヤー大の携帯型として売り出されている。日本での販売価格は3万円程度。