日本代表FW金崎夢生(26=鹿島)が、国際Aマッチ初得点を挙げた。5年ぶりのA代表復帰戦となったシンガポール(FIFAランク152位)戦に1トップで先発し、前半20分に左足で先制ゴール。2点目の起点にもなって勝利に火をつけ、日本(同50位)をE組首位に押し上げた。前回6月のホーム戦でまさかのスコアレスドローに終わった相手を切り崩す活躍で1トップ争いが激化した。17日はアウェーでカンボジアと対戦する。

 ハリルジャパン初招集で即、センターフォワード(CF)に抜てきされた金崎が、鮮やかで力強い代表初ゴールを決めた。前半20分、本田の右クロスを武藤が頭で折り返し。真ん中に陣取っていた金崎が胸でトラップし、左足でボレー。指導書のような美しい一撃をゴール右上に突き刺した。6月のホーム戦で神セーブを連発したGKイズワンも防ぎようがない。10年10月12日の韓国戦以来5年ぶりの代表戦で1発回答した。

 日本を楽にした。5カ月前は0-0で逃げ切られた相手。今回も点を取れなければ悪夢の再現もあるアウェー戦だったが、先制して活性化した。前半26分には清武へスルーパスを出して本田の得点の起点になり「今日はキヨ(清武)の誕生日だったんでね。(大分から)ずっとやってきて、一緒の場でプレーしてゴールできた。うれしかったです」と楽しむ余裕があった。

 19歳で代表デビューした男の26歳での再ブレーク。海の向こうで意識が変わった。13年からドイツのニュルンベルク、ポルトガルのポルティモネンセを渡り歩き、ドリブルで鮮やかに抜いても点に直結しないと相手にされなかった。泥臭くても結果を出す方が重要。14-15季の前半戦は10番を背負い、球際で削り合いながら17試合9得点と爆発した。鹿島でもナビスコ杯5戦5発で優勝に貢献した。

 勝ち気あふれる男だ。名古屋時代は年上のDF闘莉王とロッカールームで怒鳴り合い、U-22(22歳以下)代表候補合宿では鹿島柴崎の胸ぐらをつかんだ。「ポルトガルでも選手全員とケンカしたよ。思ったことは伝えた方がいいから」。鹿島でも「正直、ジーコスピリットと言われても分からない」と絶対視される領域にも踏み込む。チームに多少の苦手意識があったシンガポール戦でも尻込みしない。前半の早い時間にゴールをこじ開けてみせた。

 わが道を行く点取り屋の台頭に、滝川二高の先輩FW岡崎も「いろんな選手が力をつければ、自分ももっと試合に出たくなる」と歓迎。「真ん中にパワーが足りない」と継続調査してきたハリルホジッチ監督も満足させ、不動のCF争いに風穴をあけた。伝説の「ムー大陸」から夢生と名づけられた金崎が、日本にロマンをもたらしていく。

<金崎夢生(かなざき・むう)アラカルト>

 ◆生まれ 1989年(平元)2月16日、三重県津市。

 ◆サッカー歴 安濃小2年時にフットサルを始め、東観中でサッカーに転向、高校は滝川二へ。

 ◆サイズ等 180センチ、70キロ。A型。利き足は右。

 ◆タイトル男 大分で08年にナビスコ杯で初優勝、ニューヒーロー賞に。名古屋では10年にJ1リーグ制覇。鹿島では今年のナビスコ杯V。

 ◆海外挑戦 13年1月にドイツ1部ニュルンベルクと契約。同年秋にポルトガル2部ポルティモネンセへ。今季から鹿島で、27戦9発。J1通算178試合25得点。

 ◆代表 U-18、20を経て09年にA代表初選出。同1月20日イエメン戦でデビュー。通算6試合1得点。

 ◆おとこ気 4月3日J1鳥栖戦でDFキムに顔面を踏まれ、後日謝罪に来たキムと記念撮影。関係者は握手を求めたが「それじゃ和解にならない」と金崎から肩に手を回した。