日本代表FW原口元気(25=ヘルタ)が笑って、泣いた。前半5分に先制点をマークし、W杯アジア最終予選で3試合連続得点となった。3戦連発は97年フランス大会予選の呂比須以来19年ぶりで、すべて先制点だったのは、93年米国大会予選のカズ以来。一方で同点に追いつかれるPKを献上し、良くも悪くも印象を残した。
天を仰ぎ、その足取りは重かった。日本の唯一の得点者は原口。試合後の取材ゾーンで、シャワーを浴びて半乾きの髪の毛を手でかきながら、立ち止まった。「1人1人が球際で勝って、ミスなくすべてがうまくいっていた。だからこそ、あのミスはしてはいけなかった」。1-1のスコア。どちらのゴールにも絡んだ。
まずは笑った。前半5分。相手のミスパスをカットし、長谷部に預けて前を向いた。本田へ縦パスが入る間、徐々に歩幅を広げて加速。トップスピードに達した時には、DFラインを抜けだしていた。「かなり落ち着いていた。自分には珍しいくらい」。GKをよく見て蹴った左足シュートが、ゴール右隅に吸い込まれた。原口から始まり、原口が仕留めた。
ゴール前へ走り込むスプリント力は2年かけて向上させた。父の一(はじめ)さんが筑波大で非常勤講師をしている縁で、同大学准教授の谷川聡氏と個人契約。シドニーとアテネの両五輪に出場し、陸上男子110メートル障害の日本記録を持つハードラーの指導を受ける。体幹を強化して姿勢を良くすることでスピードは上がった。ヘルタでは走行距離、スプリント回数で1位の常連になった。
そのスピードにブレーキがかけられず、後半5分に今度は泣いた。ペナルティーエリア内でのピンチに猛然と戻ったが、止まれずFWユリッチにタックル。PKを献上しドローになった。「あれはPK。危ないと思って戻ったけど結果的に僕のせい。なんとか止まるしかなかった」。失点を悔やみ、息を細らせた。「ヘルタにもう1度帰って質を上げるしかない。1点取ってもう一仕事できるシーンはあった。もったいない」。最終予選3戦連発。猛省で覆い尽くした歴史的な1発は、決して色あせない。【栗田成芳】
▼W杯最終予選連続試合ゴール 原口が9月6日のタイ戦、10月6日のイラク戦に続いて3試合連続ゴール。日本代表のW杯最終予選での3戦連発は、93年のFWカズ、97年のFW呂比須に次いで19年ぶり3人目の最長タイ記録。呂比須は加茂監督更迭後を引き継いだ岡田監督の就任初戦で同点、2戦目が先制点、3戦目が1-0からの追加点で達成。W杯初出場を決めた日本の「救世主」となった。なお、今回の原口の3戦すべて先制点で、先制点での達成は93年のカズ以来2人目。

