日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、個別情報収集を開始した。5日に大阪入りし、日本代表の練習を視察。今までは報道陣はもちろん、代表スタッフにも選手個人名を挙げることはなかったが、パラグアイ戦(4日)の夜に原博実強化担当技術委員長(51)に、DF槙野智章(23=広島)に関する報告を求めた。さらに離脱したMF遠藤らとは4日の夕食会場で個人面談するなど、10月8日のアルゼンチン戦(埼玉)でお披露目となるザックジャパンへ、具体的なチーム作りに着手した。

 遠慮がちだった新指揮官から、意外な名前が飛び出た。パラグアイ戦を終えた4日の夜だった。「槙野ができるポジションはセンターバックだけなのか?

 両サイドはできるのか?

 彼に一番適しているポジションは?

 DFで何であんなに(11点も)点が取れるんだ?」。質問された原委員長は、監督が初めて選手個人名を挙げて興味を示したことに一瞬驚いたが、間髪入れず答えた。「チームではセンターバックもサイドもウイングもやってます。ヘディングも強く、得点もかなり挙げています」。同監督が帰国する9日には、広島での槙野のプレーを編集したDVDを渡す予定だ。

 監督の意向をくんでか、この日の地元大学生との9対9のミニゲームに、槙野は4バックの左サイドで出場した。ジーパンに紺のシャツ姿でスタンド観戦したザッケローニ監督は、この日もメモを取りながら、練習風景をじっくり観察。同監督は3-4-3システムを基本に、4-3-3などの攻撃的戦術を用いることが多く、槙野は本職のセンターバックだけでなくサイドバックか、ウイングバックとしても期待しているようだ。

 ザッケローニ監督は食事会場でもアグレッシブに動いた。それまで自分のテーブルで選手の振る舞いをチェックするだけで、選手たちとは距離を置いていたが、4日の夕食会場では、負傷などで離脱が決まったMF遠藤と松井、今野、DF栗原のテーブルに足を運んで、肩に手を掛けながら個人面談した。特に岡田ジャパンの心臓と呼ばれていた遠藤とは、5分以上も話し込んだという。

 この日、練習場に向かう前には「これから本格的に選考が始まるからみんな頑張ってね」と選手に伝えた。ザックジャパン構想は、着々と進んでいるようだ。【盧載鎭】