ザックジャパンが異例の「ハイパント攻撃」で完全アウェーの劣勢を覆す。日本代表は13日、北京市内でW杯3次予選北朝鮮戦(15日、平壌)に向けた調整練習を実施。キックオフ時にボールを後方に1度下げ、FWハーフナー・マイク(24=甲府)や前田遼一(30=磐田)にロングボールを蹴りこむ「ハイパント攻撃」を繰り返し確認した。22年ぶりの平壌での試合で、5万人収容の金日成競技場は満員が濃厚。ホームの大歓声を背に立ち上がりから猛攻を仕掛ける北朝鮮の機先を、奇策で制する。

 冒頭15分のみ公開の予定が、完全公開となった練習場で、堂々と奇策が試された。キックオフと同時にセンターバック(CB)にパスを下げ、前線に上がったハーフナーや前田にロングボールを供給する「ハイパント攻撃」。ザック流のアウェー北朝鮮対策だ。

 吉田、今野、伊野波らがロングパスを前線に放り込むと、1トップのハーフナーや前田の周辺にはFW香川ら前線の選手に加え、1トップが右に流れれば右サイドバック(SB)、左に流れれば左SBまで走り込む。「相手はホームでプレッシャーをかけてくるので、それを防ぐため」とDF駒野が解説したように、相手のプレスを受ける前に、一気に北朝鮮を押し込むことができるプランだ。

 これまで北朝鮮のホームゲーム2試合を分析。満員の会場の大声援を背に立ち上がりから激しいプレスをかけ攻撃的にくる傾向が強かった。特に今回の会場はこれまでのホーム2試合の羊角島競技場(3万人収容)を超える5万人の集客が予想される。だからこそ、「逆に相手を押し込もうという意図」(DF槙野)の「ハイパント攻撃」が取り入れられることになった。

 DF内田が「この代表では初めてですね」と話すようにザックジャパン初の試み。平壌に運び込めるものも制限され、発言も自主規制する不自由な環境の中、ピッチ上でも完全アウェーを強いられる。ザッケローニ監督がこの日のミーティングで選手に「アウェーの試合の入り方が大事。ウズベキスタンとタジキスタンの2試合はよくなかった」と強調した課題を、奇策により解消する意味も持つ。

 北朝鮮は3次予選敗退が決まり、本拠地で日本に勝つことだけを狙い、がむしゃらにくるはず。だが、日本にとっても、この一戦がチーム力向上の貴重な経験になる。ハーフナーは「やったことない。初めてのことなんで」と苦笑いを浮かべたが、策士ザックは勝利と経験の一挙両得を目指す。【菅家大輔】