【マスカット(オマーン)15日=栗田成芳】新しいことにチャレンジしているから「自分に腹が立つ」。不調に終わった日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が、苦悩を口にした。W杯アジア最終予選オマーン戦で2-1と勝利し、W杯ブラジル大会出場に王手をかけた。しかし、本田自身のプレーの出来は、万全の状態からは程遠いものだった。試合後は口を開かずバスに乗り込んだが、モスクワに出発する直前、心境を語り出した。

 ようやく開いた本田の口から、自分への苦言が口を突いた。オマーン戦の90分。いつになく精彩を欠いた。合流間もない日程に、35度の暑さ。モスクワとの温度差は40度近く、環境面ではすべて不利に働いた。試合後は一言も発することなく、バスに乗り込んだ。それでも飛行機に乗り込む直前、口を開いた。

 「同じ課題が出てることに納得がいかない。それを繰り返している現実がある。常に自分には期待しているんですが。もどかしいというか、腹が立つというか。まあ、残念ですね」。

 チャレンジをするから頭を悩ます。本田が取り組む課題とは。それは頭の中のイメージを、自分の足でつくりだす「攻撃の形」だ。「自分からどうクリエートするかが物足りない。やり方は100通りある。個人技、コンビネーション、戦術に合った攻め方、すべてを総合して考えることができる」。

 目の前の敵を崩すやり方は無数にある。だから気温が40度を超えようと、体が動かなくなろうと、その中でやり方はきっとある。オマーン戦では、そのすべを探りピッチの上でもがき続けていた。

 サッカーは1人でやるものではない。周囲の仲間がいてこそ。それは十分理解している。だが捨てられないものもある。「基本はそう。9割方そうだと思う。でも、残りの1割にこだわりたい自分がいる」。試合終了直後、ベンチ前でザッケローニ監督と固い握手をかわした。しかし、ピッチの歓喜の輪には入らなかった。チーム力をしのぐ1割の力になれなかったことが、悔しかった。

 惨敗した10月のブラジル戦から手応えをつかみ「新しいことに取り組んでいる」と言い続けてきた。経由地であるドバイ空港に降り立つと、さらにこう言った。「もしかしたら、聞いても分からんかもよ。日本人が誰も考えつかなかったことかもしれん」。未踏の域を、ひたすら進む。