「W杯優勝を信じよう-。この時代には本田圭佑がいる」 !

 日本代表のエースMF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が、日刊スポーツだけに14年W杯ブラジル大会への熱い思いを語った。本紙では今年1月の沖縄・石垣島自主トレを皮切りに、モスクワで2度、そして本大会出場が決まるまで密着。W杯優勝を公言した男の独占激白「本田理論」を、今日から2日間にわたってお届けする。【取材・構成=八反誠、益子浩一】

 喜ぶのはまだ早い。本田は気の緩みや、慢心を察知すると、いつも警鐘を鳴らす。仲間にも、自分自身にも…。日本は5大会連続のW杯出場権を獲得した。これまでなら、世界の大舞台に立つ権利を得ただけで喜んでもよかった。だが、今は違う。既に公言したW杯優勝へのスタートラインに立ったにすぎない。では、本当に優勝できるのか、可能性はどれほどか。本心に迫った。

 「7、3かな。7(割)はできていないかな。3は手応えかな。でも振り返ると今まで(の人生)も7、3。常にその質問をされてきたけど、この年でロシアにいるとは思いませんでしたとか。(VVV時代の)あの年でオランダ2部に落ちるとは思いませんでしたとか。物足りなさは7割、手応えは3割。(常に)変わってないよね。焦っていると言えば、焦ってる。でも、今日やれることをやろうと生きている。7、3を6、4にしよう。5、5にしよう。(数値を)逆転しようと思ってやっているから。生き方に迷いはないですよね」

 歩んだ道のりを考え込むように、静かな口調でつないだ。丁寧な語りが、より心の奥から響く言葉のように聞こえてくる。

 「満足は26年間したことはないけれど、3割の手応えはつかんできている。だから進んでいるんです。手応え3が今後、ゼロになったら引退。それがサッカー選手としてのリミット。決断やと思う。どのみち、その答えが出る大会(W杯)がやってくる。俺は7、3でやっているけれど、それは分からへん。俺はローペースだと思っているけど、もしかしたらハイペースかも。本当に、価値はそこ(W杯)で出る。26年間、俺は割と自分には厳しめの評価やから。それじゃないと前には進めないから、あえて厳しくもしている。毎年、一緒。(成長度が)低下もしていないし、上昇しているとも思えへん」

 3割の手応え。7割の後悔。期待値をさらに高めようと、必死で自分を追い込みながら生きてきた。自身2度目のW杯まで残り1年。心から喜べる日は来るのだろうか。

 「(W杯の)結果によるよね。7、3が一気に逆転するのは、1つの大会であるわけやから。ずっと(W杯に)こだわってやってきた。クラブなら、欧州CL。サッカー人生でいえば目標ゲームはそこ(W杯)。でも、もう夢じゃない。目標に変わっている。目標っていうのは、(達成するまでの)距離を表している。今年の夢とは言わへん。今年は目標。10年後は、夢って言う」

 昨年10月16日の欧州遠征ブラジル戦。日本は0―4で大敗した。その際に「今でも格上だとも思っていない」などと、あえて楽観的なコメントを残している。

 「正直、みんなは何言うてんねんと思うかも知れへん。この前ブラジルに負けているけど、俺の中では確かに、夢ではなく目標に変わっている。常に3割進んできているから。(W杯まで)逆算もしているから、満足はしていない。でも手応えはつかんでいる。悲観的なコメントをわざとすることもあるし、めちゃくちゃへこんでいるのに、ポジティブにコメントすることもある」

 次第に言葉は熱を帯びてくる。W杯の話題になると、どんなに冷静に努めようとしても、抑えきれなくなる。それが本田の姿だ。

 「今まで、できなかったことも多い。認める。でも、できたこともある。それが3割やしね。俺の人生は7、3が哲学。だから3をW杯に持って行く。それに、いちゃもんをつけるな !

 (W杯優勝が)無理だと言っているヤツは、7の方を言うてるんやろ。俺は今まで3は有言実行してきたぞ、って。(周囲が)信じるかどうかは分からへん。万人はそっち(不可能な7)を信じる。でも(可能な)3は、もしかするんじゃないかと思っている人もいる」

 本田の顔は真剣だ。真剣に、W杯優勝への思いをまくしたてるように語る。

 「時代はそうなってきているよ。(香川)真司がマンチェスター(U)に行って、長友がインテルに行って、ドイツにもちょこちょこ(選手が)増えてきた。まだまだ物足りひんよ。宇佐美ももっと活躍する予想だったかも知れへんよ。宮市ももっと活躍すると思ってたよ。予想外はいっぱいある。でも、予想以上もある。そこはプラマイゼロの部分でもある」

 一拍おいて、こう続けた。

 「あとは信じようってことやね。この時代に本田圭佑がいることを―。周りがどう融合して(W杯で)どういう結果を残すか。もちろん、俺だけの力じゃないよ。坂本龍馬だって、あの時代だから、あれだけ目立ったかも知れへん。それは分からん。俺がこうやって(今すぐに)歴史に残るものじゃない。俺が引退して、死んだ後に、みんなが評価するものやしね。坂本龍馬だって、だいぶ遅れて評価されたかも知れへん。それ(歴史に名を残すこと)を願っているわけじゃないけれど、ただ俺は信念を貫くしかない。明日を分かっている人なんか1人もおらへんのやから」

 本気だ。1年後、ブラジルで開催されるW杯、自身は2度目となる舞台へ。日本のエースは、世界の頂点に立つ覚悟を固めている。夢は目標に変わった。だから、我々も信じたくなる。本田の思いを、信念を―。