<国際親善試合:日本4-2ニュージーランド>◇5日◇国立

 日本がW杯イヤーの初戦を勝利で飾った。トップ下でMF本田圭佑(27)が大量得点を演出し、日本(FIFAランク50位)が、W杯予選敗退のニュージーランド(同89位)に勝利した。改装前最後となる東京・国立競技場での国際Aマッチ。世界屈指の名門ACミラン本田としての凱旋(がいせん)試合で、香川にPKを譲るなど前半だけで事実上の3アシスト。6月開幕のW杯ブラジル大会へ弾みをつけた。

 ほんの一瞬、目と目が合っただけだった。言葉はなくとも本田は香川の胸の内を理解した。前半7分。香川が得たPKを蹴ったのは、これまでずっとスポットに仁王立ちしてきたキッカー本田ではなくマンチェスターUで苦しむ香川だった。驚くほどあっさり譲った。

 「真司(香川)が活躍してもらわないとW杯は勝てない。彼が乗ることで俺にも利益がもたらされるんです。W杯までまだ1年以上あったら譲らなかった」

 いつも逆算している。公言する「W杯優勝」から導き出した答えは香川に得点することで、きっかけをつかんでもらうこと。その後もDF森重の代表初ゴールとヒールパスからFW岡崎の2点目をアシスト。改装前最後の国立での国際Aマッチ。現・国立で自身通算11試合目の初得点はならなかったが仲間は点を重ねた。

 自ら要求した背番号10を背負う名門ミランではトップ下から2列目の右へ追いやられた。直近のユベントス戦(2日、ホーム)ではボランチで途中出場。立場は危うい。少しでも結果はほしい。後半は強引なまでにゴールに迫る場面もあったが、香川に愛あるメッセージを届けた序盤の選択こそが最大の見せ場だった。

 組織はどうすれば機能するか、どうなればその人物が持ち味を発揮できるかを考えている。小さなころから三国志が好き。ここ数年は世界的企業トップの自伝もたくさん読んできた。ただ、受け売りは嫌い。すべてかみ砕き「本田流」に進化させ身に付けている。生き方と同じで書いてあることを額面通りそのまま取り入れるのでは面白くない。どんな本も1度読んで頭に入れるとすべて手放す。本田の部屋には本棚がないという。

 本田もミランで自力ではい上がる必要がある。その覚悟も口にした。

 「僕はトップ下のDNAを持っている。トップ下は自分の家みたいなものですから心地いい。ただ、心地いいだけを求めるなら(ミランに)行かなければ良かっただけ。新境地にたどり着きたいと思っている」

 思うようにいかない状況を乗り越えてもう1段階、自らを引きあげる。それが公言するW杯優勝にもつながる。そう信じて突き進む。【八反誠】