金沢が強豪を抑えて単独首位に立った。ホームの水戸戦で、FWジャーン・モーゼル(21)の劇的なロスタイムヘッドで勝利。前節、勝ち点22で並んでいた磐田が札幌に敗れたため、初の単独トップになった。昇格1年目のチームが首位になるのは史上初。残留が目標だった北陸の小クラブが、大激戦のJ2に旋風を巻き起こす。

 後半ロスタイム3分、金沢に歓喜を運んだのは、途中出場のFWモーゼルだった。左サイドを駆け上がったDF阿渡のクロスを頭で合わせた。ボールがゴール右下に飛び込むのを確認するとサポーターの待つゴール裏へ。前節、総得点差で磐田に次ぐ2位だったチームを、首位に押し上げた。

 予算の関係もあってチームには通訳が不在。殊勲のモーゼルは、スタンドから呼んだ友人に通訳してもらい、インタビューに答えた。「結果が出せ、チームが勝ててうれしい。使ってくれた監督に感謝したい」と笑みを浮かべた。

 J2初挑戦の開幕こそ大宮に敗れたが、北陸新幹線開業翌日に行われたホーム開幕戦で東京Vに勝利。その後は横浜FCに敗れただけで勝ち点を積み重ねている。新幹線効果の「金沢ブーム」に乗るように、強豪を次々と撃破してきた。

 日本代表経験者がいて当たり前のJ2だが、金沢にはいない。それでも、昨季J3を制したメンバーを大きく変えず、安定した守備で戦ってきた。就任4年目の森下監督は「首位に立ったのはうれしいが、目標はあくまで残留。そのために勝ち点を積み重ねていくだけ」と、首位にも冷静に言った。

 優先的に使える天然芝の練習グラウンドはなく、クラブハウスもない。現状はJ1のクラブライセンスを持たないため、仮に優勝しても昇格はできない。夢のJ1のために関係者は自治体への働きかけを続ける。目を向けてもらうには、首位どりほど効果のあるアピールはない。

 ◆J2初昇格クラブの首位 今季からJ2に初めて昇格した金沢が、第11節終了時でクラブ史上初の首位に浮上。J2がスタートした99年参加の10チームを除き、J2初参入クラブが単独首位に立つのは初。05年に初昇格の徳島が、開幕戦で3-0で勝利し、山形と勝ち点、得失点差、総得点で並び首位タイに立ったことは過去にあった。

 ◆ツエーゲン金沢 ホームタウンは石川全域で、本拠地は石川県西部緑地公園陸上競技場(収容2万261人)。56年に創設された金沢サッカークラブを母体に、Jリーグ入りを目指し06年に現クラブ名に変更。14年、Jリーグに入会し、J3で優勝。J2へ昇格。ツエーゲンはドイツ語で「2」を意味するツヴァイと、「進む」を意味するゲーンからの造語で「チームとサポーターが共に進んでいく」の意味。「強いんだ」という金沢弁でもある。