熱い男は、膠着(こうちゃく)を打ち破る一手を、冷静に狙っていた。後半13分。右からの折り返しを、ゴール至近距離でねじ込んだのは、浦和DF槙野智章(28)だった。MF関根からのマイナスのクロスに、自陣方向に戻りながら、巻き込むような右足シュート。「いつも僕の得点はセットプレー。流れの中で取りたいと思っていました」。側転からのガッツポーズで、スタンドを喜びの渦に巻き込んだ。

 「自分でもなぜあそこにいたのか、よく分からない部分もあります」と槙野。セットプレーの流れで前線に残っていたわけでもない。「でも同じシステムではめ込んで守ってくる湘南相手には、自分がゴール前に入っていくのが有効だと思ってはいました」。前半から鋭い出足で、ペースを握らせてくれなかった相手守備を、思惑通りに崩した。

 貴重な先制点だけでなく、アグレッシブな守備でも会場を沸かせた。同26分、J1最高クラスの走力を誇る湘南FW高山に走り勝ってボールをカット。すると高山の顔の前にガッツポーズを示し、大きくほえた。当然、スタンドからは、湘南サポーターの怒声が起きた。しかし、浦和サポーターがそれ以上に大きな歓声で、槙野に応えた。

 「FWが得点してとか、GKがファインセーブしてとかのガッツポーズはある。でもDFが守備で、っていうのはあまりないですよね。その分会場が沸いて、流れを持ってこれるというのは考えています」。熱い攻守の裏に、冷静な計算。槙野の活躍で浦和がJ通算350勝目を挙げ、年間勝ち点1位返り咲きを果たした。【塩畑大輔】