清水は東京と引き分けに終わった。0-0で迎えた後半5分、FW鄭大世(31)がゴール前のこぼれ球を左足で押し込み、加入後6戦目で初ゴールをマーク。Jリーグでは10年以来、5シーズンぶりの得点となった。しかし、チームは同25分に直接FKを決められて同点。またしても勝ちきれず、状況は厳しいままだが、エースが決めた1発は残留に向けてかすかなかな希望となった。

 清水が序盤から勝利への執念を見せた。前半5分、左クロスをFW鄭がヘディングで合わせてゴールに迫る。同20分には自陣から鋭いカウンターを仕掛け、最後はMF本田拓也(30)がシュートを放った。田坂和昭監督(44)が「いい準備はできた」と話した通り、守備も安定。6試合ぶりに前半を無失点に抑えると、待ち望んだ瞬間が訪れた。

 後半5分、左サイドを崩すと、FWウタカ(31)が右足でシュート。相手GKがはじいたボールをゴール前に詰めていた鄭が左足で押し込んだ。加入後6戦目でようやく飛び出した初ゴール。Jリーグでは実に1953日ぶりの1発だ。川崎F在籍時にはリーグ戦で6戦6発と抜群の相性を誇った相手からまたしても得点。「東京キラー」の点取り屋が結果でチームをけん引した。

 鄭は「正直ホッとしている。この後の試合に向けて自信になった」と素直な気持ちを明かした。ここまで得点はなかったものの、前線からの献身的な守備や普段の練習で闘争心をむき出しにするなど、チームに貢献していた。田坂監督も「ここから波に乗ってくれればチームにとってプラスになる」とさらなる奮起に期待した。

 しかし、チームはまたしても勝ちきれず、監督交代後も4戦勝ちなし。この日は15位新潟が勝利したため、勝ち点差は5に広がり状況はさらに深刻となった。鄭は「浮かれることはない。次もやることは変えず、その中でチームに貢献したい」。そう話すエースの言葉を信じて、残り8試合を戦うしかない。【神谷亮磨】