3年連続得点王に立った川崎FのFW大久保嘉人(33)の莉瑛夫人が、夫への感謝の手紙をつづった。同級生で高校3年から交際を始め、スペイン1部マジョルカに移籍する04年12月に結婚した。今夏に流産した際、妊娠時、子宮にぶどうの房状の絨毛(じゅうもう)が増殖する胞状奇胎を発症し、抗がん剤治療が必要になったことを公表。副作用で髪が抜ける可能性があったため、大久保は3人の愛息とともに丸刈りにして史上初の金字塔をつかんだ。Jリーグ最高の点取り屋を、プロ入り前から支え続けた夫人が直筆メッセージを寄せた。

<莉瑛夫人からの直筆メッセージ>

 三年連続得点王、改めておめでとうございます。

 みんなが設けてくれたお祝いの席でしか「おめでとう」と伝えてなかったね。心の中では祝福と労いの気持ちでいっぱいです。

 シーズン終盤、決して休みたいわけじゃなく「早く今シーズンが終わってほしい」とよく呟きよったね。本当によくあのプレッシャーと戦ったなと尊敬しています。隣でその姿を見ながら、何と言葉を掛けたらいいか迷うばかりで、気が利かず申し訳なかったな…。

 そればかりか、私の入院で子供達のこと、普段は全く手をつけない家事を母と協力してやってもらって、たくさん負担を掛けてしまったね。

 私はおかげ様で、家のことを心配することなく安心して治療に専念できました。感謝しています。

 入院前、突然坊主頭で帰宅した時は本当に驚いた。

 ファッションとかには疎い割に、髪型にはこだわっていたし、今まで何度か粗相して坊主にして許してもらおうと思ってたこともあったから(笑)

 三兄弟のくりくり坊主頭も揃って、一通り笑ったあと、嘉人の狙い通り、私の不安は本当になくなって嬉しかった。ということも、ちゃんと伝えてなかったね。女という生き物は複雑で、男の人の考えと大きくズレがあったりするけど、この件、私は嬉しかった。

 心配していた脱毛もそんなに目立つ程なく済んで「オレ、坊主にせんでもよかったやん」とか冗談交じりに言うけど、それでも普段より抜け落ちる髪を気にする私に「全然わからんよ。目立たん」と。

 そうやって、たまに優しかったりするのがズルいです。

 今回、この手紙を書くにあたり「人様にお見せできるものではない」「恥ずかしい」と拒否をしていた私に「お世話になっている記者さんからの依頼だから。お願い!」と、義理を通すところもみんなに知ってもらいたいような、秘めておきたいような…。

 ピッチでの大久保嘉人は、よく熱くなりすぎて家族として安心して見れない時があるし、自分を追いつめるためにビッグマウスをたたくこともあって、悪童のイメージが強いよね。確かに嘉人はピッチだけでなく、家でも悪童。でもやっぱり、旦那がそういう悪いイメージだけで見られるのは、時々辛かったりするので、実は大久保嘉人は傷付きやすく、涙もろく、情に厚いということも記しておきます。

 嘉人、素晴らしいチームメイトやスタッフに恵まれて、そして重圧に耐えて得た記録。サッカー人生の中でまた宝物が増えて、喜ぶ姿を見せてもらって本当に有り難いです。

 これからもサッカーが大好きで、応援して下さる方々を大事にするハートの熱い人でいて下さい。

 一番のサポーターは嘉人を産んでくれたお母さんと、天国のお父さんやけど、私と子供達もできる限り負担を掛けないよう、近くで支えることができたらいいなと思っていますので、これからもどうかよろしくお願いします。

妻 莉瑛より

(原文まま)