仙台はアウェーで川崎Fと1-1で引き分けた。スコアレスで折り返した後半25分に、MF富田晋伍(29)がリーグ戦では初めてとなるヘディング弾で先制。しかし、わずか3分後に失点し、痛み分けに終わった。11年に同じ等々力で行われた伝説の一戦(対川崎F○2-1)の再現ならず、リーグ7戦未勝利で順位も17位へ1つ落とした。

 逃げ切れなかった。格上の川崎Fを押し込んで先制したが、甘くはなかった。前節とは比べものにならないほどの好ゲームを演じたが、簡単には勝たせてもらえない。渡辺晋監督(42)は「等々力という場所は我々にとって思い入れのある場所。あの試合を再現し、勝ち点3を持って帰ろうと思っていた」。しかし、5年前に逆境をはねのけて勝利を奪った、あの伝説の一戦を再現することはできなかった。

 ドローで7戦未勝利。勝ち点1は手にしたが順位は1つ後退した。しかし、ブレずに戦ったことで再浮上の兆しを見せた一戦だった。攻撃力に秀でた相手との対戦にも、昨季から着手する、相手よりボールを保持する時間を増やす「ボールを握る」(渡辺監督)スタイルを貫徹。前線からのプレス、守備ブロックを築く部分で、メリハリのある連動を披露。引いて守る策も有効だったはずだが「自陣に引きこもる形より、高い位置からボールを取りに行く方が利益あるプラン」とやり方は変えず、とにかく攻めた。

 仙台スタイルを貫き、相手を押し込むことには成功した。この日の朝に体調不良を起こしたDF平岡が欠場するアクシデントはあったが“急造”最終ラインは粘り強い守備で前半をスコアレスに封じる。後半25分にはMF野沢拓也(34)のクロスに反応した富田が、ジャンピングヘッドでゴールに突き刺し先取点をマーク。「拓さん(野沢)を信じて思い切りスペースに入ったら良いボールが来た」と富田。主将として試合を振り返れば「今日はサポートも速く、ポジションや位置取りも良かった。みんながチームのためにやれていた」と手応えを口にした。 次戦(8日)はホームで最下位福岡を迎え撃つ。富田は「良い方向を向いていると思うので次はしっかり勝つつもり」と、前を見つめた。【成田光季】

 ◆伝説の川崎F戦VTR 11年に発生した東日本大震災によりJリーグは約1カ月間にわたり中断。4月23日に再開し、仙台はアウェーで川崎Fと雨の降りしきる等々力陸上競技場で対戦した。前半37分に先制点を奪われたが、後半28分にFW太田が足をつりながら同点ゴール。座ったままのガッツポーズ姿は歓喜の象徴でもあった。同42分にはFKからDF鎌田が頭でネットを揺らして逆転勝ちを収めた。仙台イレブンは被災地の復興などへの思いを胸に戦い、サポーターはゴール裏に「宮城の希望の星になろう」と横断幕を掲げ、強い絆で結ばれ試合に臨んだ。劇的勝利に、当時監督の手倉森誠現U-23日本代表監督も涙を流したほど、今も語り継がれる一戦となった。