浦和の選手たちが、鳥栖の「カテナチオ」を崩せなかったことを悔しがった。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦、敵地でのFCソウル戦から中3日。延長も含めた120分間、さらにPK戦にもつれる激闘の末の敗戦で、心身共に準備が難しい一戦だった。しかし序盤からいつも以上に攻守の早い切り替えを徹底し、敵陣でボールを奪い続けた。

 ボール支配率は68%。CKも1本しか与えないなど、自陣への進入すらほとんど許さなかった。ペトロビッチ監督はスコアレスドローにも「この状況でこれだけ戦えたのは収穫。第1ステージ終了時にはトップに立っていると確信した」とまで言った。

 選手たちも「疲労は関係なかった」と振り返ったが、一方で「試合中、ハリルホジッチ監督が言っていたことが頭に浮かんだ」と話した。

 26日のキリン杯日本代表メンバー発表会見で、ハリルホジッチ監督は浦和も含めた日本勢のACL早期敗退を問題視。さらに「J1を毎週見ているが、大半のチームが同じようなやり方をしている。川崎F、浦和はハイプレスをかけているが、他は守りを固め、相手のミスをひたすら待っている」と国内でのリーグ戦の内容をばっさり斬った。

 この試合は、まさにハリルホジッチ監督が批判した通りの展開になった。鳥栖は本来の4-4-2システムから、守備時にサイドハーフが最終ラインに下がる布陣で、守りを固めた。直近のリーグ戦で、大宮や新潟が浦和を苦しめた形とほぼ同じだが、プレーの方針はまったく違った。

 カウンター攻撃を仕掛ける場面もほとんどなく、ペナルティーエリア内に7、8人が入って守り続けた。FW興梠は「いつもは『縦パス入れられるのに、なぜ入れてこない』と思うこともある。でも今日は本当に、まったくスペースがなかった」と苦笑いした。

 浦和の選手たちの耳には、相手選手同士の「時間稼ぎ」という言葉が、早い時間帯から聞こえてきた。ボールボーイの少年が投げるボールが、浦和の選手にまったく届かなかったのは、ただの失敗が続いただけだと思いたい。しかし運営スタッフも同じように、外に出たボールをすぐに返してくれなかっただけに、選手たちの目には「狙い」が徹底されているようにも見えた。

 守りを固められるのは、初めてのことではない。しかし選手たちは、Jリーグとして「ハリル発言」を見返したいという思いが強いだけに、今回の試合内容については特別に思うところがあった。

 MF柏木は「ガチンコで来てもやれるメンバーが鳥栖にはいると思う。大宮などもしっかり戦ってきて、うちとしては苦しくもなったけど、いい試合になった」と率直に語った。

 普段から「海外組も、みんなJリーグから巣立っている。子供たちが『プロになって、あそこでやってみたい』と思うようなJリーグでなければ、日本のサッカーの将来はない」と繰り返している。だからこそ、ハリルホジッチ監督の指摘は胸に刺さっていた。今回のスコアレスドローという結果以上に、言われた通りの内容になったことが残念だった。

 DF槙野も「ああいうやり方をされたからこそ、うちは点を取って、勝たなければならなかった」と心底悔しがった。日本を代表して臨んだACLで敗れてしまったことへの「自責の念」もそれぞれが持っている。アジアで勝つには。ハリル発言を見返すには。前に出るサッカーで、しっかりと結果を出すしかない。