「心労による体調不良」で退任が取り沙汰されていた鹿島の石井正忠監督(49)が、一転して復帰する可能性が出てきた。29日、鈴木満常務取締役強化部長(59)が茨城・鹿嶋市内で同監督と面談。急に精神不安を訴え、休養に入った3日前と比べて回復が見られたという。“続投”にも意欲を示したことから、第1ステージ優勝監督の退任という異例の事態は避けられそうになった。今日30日の緊急役員会で正式決定する。

 この日午後、石井監督と3日ぶりに会った鈴木常務は少しホッとしていた。「前と比べれば、落ち着いて表情も明るくなった」。26日の練習前に突然、心労を訴えて自宅休養。27日の横浜戦を指揮できず大岩コーチが代行し、そのまま内部昇格する事態もクラブ内では覚悟していたが「(続投に)前向き、意欲的だった」と復調の兆候を感じた。

 去就は「一両日中に決めたい」と明言こそ避けたが「この成績と時期に監督を代えたいフロントはいない」と続投を支持。第1ステージを制し、チャンピオンシップ出場権を獲得済み。今日の緊急役員会では体制維持が諮られる見通しだ。

 心労の原因について当初は不明点も多かったが、この日は具体的な言及もあった。7~8月に公式戦4連敗を喫し「一体感、結束力が欠如している」と前期優勝との落差に責任を感じ「引っ張れていない」と思い詰めていた。「選手をコントロールできない」「後任監督が内定」などの一部報道も目にしたといい、鈴木常務は「引き金になった可能性はある」と推察した。

 20日の湘南戦では交代を巡って金崎と口論に発展も「選手との対立はない」と同常務。横浜戦で金崎はフル出場したが、これも石井監督が進めていた先発の準備を、大岩コーチが踏襲したものという。ただ、日本代表ハリルホジッチ監督が金崎を“追放”したことにはショックを受け、心の変調をきたしたとみられる。

 それでも状態が上向いたのは、横浜戦をテレビ観戦したから。「みんな必死に戦っていて刺激になりました」。戦列を離れ「すいません」と繰り返しながらも復帰意欲を口にした。この意向は面談後にあったオフ返上のスタッフ会議で伝えられ、現場は石井監督を支える方針で一致。理想は9月3日の天皇杯2回戦(対富山)での復帰だが、理由が精神面だけに役員会で慎重に見極める。【木下淳】