浦和が10年ぶり2度目の年間優勝に王手をかけた。アウェーでの第1戦は、後半12分にMF阿部勇樹(35)がPKで先制して、今季リーグ最少28失点の守備力で逃げ切って、鹿島に1-0で先勝した。過去のCS決勝で第1戦を制したチームの年間V確率は100%。第2戦は、12月3日にホーム埼玉。0-1で負けても優勝で、同8日開幕のクラブW杯に開催国代表で出場できる。

 データ上の“優勝決定弾”は後半12分、主将の右足から生まれた。MF柏木からの右クロスを受けようとしたFW興梠が倒され、PKを得た。キッカーのMF阿部はGK曽ケ端の動きを見て、右足で冷静にゴールのほぼ真ん中へ蹴り込んだ。「自信を持って蹴った。入って良かった」。ガッツポーズする背番号22を中心に歓喜の輪ができた。

 真ん中という選択に、勝利への思いが詰まった。12日の天皇杯4回戦で、PK戦の末に川崎Fに敗れた。阿部はGKの動きを見て蹴るも、1度は左ポストに当てて失敗。GKが先に動いたため蹴り直しとなり成功させたが、左ポストで思い起こすのは昨年のCS準決勝だ。G大阪戦の延長後半に勝ち越しのオウンゴールになりかけたG大阪のDF丹羽のバックパスが左ポストに当たり、そこから始まったカウンター攻撃で浦和は決勝点を奪われた。

 短期決戦では予期せぬことが起こり、すべてを失うこともある。天皇杯のPKでボールが左ポストをたたいた音の響きが、阿部にそれを再確認させた。GKの動きを見極め、最も安全なコースへ。大胆だが、勝利への最善策だった。第1戦を制した直後も「サッカーは何が起こるか分からない。(勝利は)あまり意味はない」と自らの緊張感を保たせるように語った。

 敵地での値千金の一撃で完封勝利を収め帰る。第2戦の埼玉スタジアムは約5万9000枚のチケットが販売当日に売り切れた。ルヴァン杯の優勝も同じ舞台。一発勝負に強い鹿島に完全勝利しての悲願が、目の前に迫った。「まだ何も決まってない。勝って終わりたい」。主将は、笑顔をぐっとこらえた。【岡崎悠利】

<CS決勝記録メモ>

 ◆初戦重要 浦和がアウェーの初戦で1-0勝利。第1ステージ(S)王者と第2S覇者が対戦した04年までの過去9度のCSでは、第1戦を制したチームの優勝が計7度。他の2度は初戦引き分けで、いずれも敵地で引き分けたチームが最終的に優勝。初戦黒星チームの優勝はない。今年と同じ3チームのトーナメント方式だった昨年の決勝も、初戦に勝利した広島がそのまま年間王者の座に就いており、CSの決勝で初戦に勝利したチームの年間V確率は100%。

 ◆第2S覇者優位 第2Sを制した浦和がCS決勝で先勝。過去の延べ10チームのCS決勝勝者のうち、7チームが第2S優勝クラブ。シーズン後半戦の勢いそのままにCSも制すケースが多く、ここでも浦和優位なデータとなっている。