大型補強のFC東京が、昨季王者でクラブW杯準優勝の鹿島アントラーズに競り勝った。今オフ移籍の目玉、川崎Fから加入したFW大久保嘉人(34)ら新戦力5人が先発に名を連ね、粘り強い守備で前半は0-0。そのまま迎えた後半37分に均衡を破った。途中出場したリオ五輪代表MF中島が、左サイドから右足でミドルシュート。GK手前でワンバウンドし、はじかれたところに大久保嘉とFW永井が詰めて、鹿島DF三竿雄のオウンゴールを誘発した。

 この1点をGK林の好セーブなどで守り切り、勝利の笛が鳴ると大久保嘉は大喜び。サポーターにガッツポーズして拍手を送り、永井と抱き合い、満面の笑みで仲間とハイタッチした。主将の日本代表DF森重も雄たけびを上げながら両拳を握り、仲間と喜びを分かち合った。1月の合宿から「言うところは言って」妥協しない姿勢を植えつけようとしてきただけに「今日は戦えていた。連係もやってみて良かったし、これから良くなっていく」と手応えをつかんだ。

 ただ、昨季J1と天皇杯を制した鹿島の堅守から得点は奪えなかった。それでも、大久保嘉は前半7分に初シュートを放ってチームを鼓舞。右ポストをたたいたが「相手のGK(クォン・スンテ)が(韓国Kリーグから)移籍してきてJリーグが初めてだった。早めに脅威を与えようと思って」。気持ちで優位に立って“ビビらせる”ため、果敢に打ち込んだ。

 後半14分には、右CKからMF東、FW永井とつながったボールを右足のダイレクトボレーで狙った。クロスバーを越えたが「ものすごいスピンがかかっていて、ふかした…。GKの顔面を狙って思いっ切り蹴ったんやけど」。招待した長男と次男の前で決められず「外してダサかった。(3月4日、大宮との)ホーム開幕戦ではビシッと決めたい」と約束した。

 チームとしては4年ぶりの開幕戦勝利。敵地カシマで勝つのも07年6月30日以来10シーズンぶりで「鹿島相手だったから、どんな展開でも勝てればいいと思っていた。すごく大きな1勝」と、移籍1年目で天敵撃破に貢献。その上で「開幕戦で完璧なチームはない。あと33試合、例えば攻撃の時に無駄なパスミスをしないとか、もっと速くゴール前に行くとか、ディフェンスがきてもいなすとか、もっと自信を持っていけばチャンスになる。大事だと思う」。今後の可能性を感じたからこそ注文を出し、悲願のリーグ初制覇へ引っ張っていく気持ちを前面に押し出していた。【木下淳】