3・11に、勝った! 福島ユナイテッドFCがJ3発足4年目で、初の開幕戦白星を挙げた。前半31分、FW田村翔太(22)のドリブルシュートで先制。YSCC横浜に2-0で快勝し、被災地のチームとして、東日本大震災から6年がたった鎮魂の日に花を添えた。

 今季からチームを指揮する田坂和昭監督(45)は、試合後の記者会見であふれ出る感情を抑え切れずに、涙した。公式戦が「3・11」と初めて重なったリーグ開幕戦。J3初采配でチーム初となる開幕白星を挙げた田坂監督は「今日は福島にとって大事な日。今までこんなに勝ちたいと思ったことはなかった。ここまで支えてくれたサポーターやスタッフ、頑張ってくれた選手に感謝したい」と声を詰まらせた。

 前半中盤まで互角の展開だったが、今季レンタル元のJ2湘南から2年ぶりにチーム復帰した田村が均衡を破った。MF鴨志田誉(31)からの縦パスをキャッチ。ドリブルで切り込み、左足で先制ゴールを決めた。ベンチ前で田坂監督とタッチをかわした田村は「裏に抜ける自分の特徴を生かしていいタイミングで打てた」とチームのアウェー通算50得点目を振り返った。

 MF渡辺匠主将(34)が右太ももを痛めてベンチから外れたが、同じ福島出身のベテランDF茂木弘人(33)がキャプテンマークをつけ、センターバックの新ポジションでチームを引っ張った。震災後の故郷に思いを寄せて移籍3年目。自身J3通算50試合目、J通算310試合目(J1=183試合、J2=77試合)をフル出場で勝利した茂木は「自分を含めて、みんな気持ちが入っていた。いい試合ができた。(福島は)生まれ育った町なので少しでも力になれるようにしたい」と自然体で話した。

 震災時に東北社会人リーグ1部だったチームは福島原発事故の影響も受け、複数選手が退団。一時期はホームゲームができず、雨天練習中止を余儀なくされるなど、チーム存続も危ぶまれた。現チームには震災後に加入した選手が多い。開幕前はミーティングで、当時の状況を把握し合って意思統一した。田坂監督は「(今は)福島の人間だと思っている。選手は勝つ意気込みを出してくれた。この気持ちで今シーズンを戦いたい」と熱い気持ちを口にした。【佐々木雄高】