ベガルタ仙台の秘蔵っ子「タクミ」が躍動した。MF佐々木匠(たくみ、19)が左シャドーでプロ初先発し、1ゴール1アシストと大活躍。後半6分に絶妙なスルーパスでFWクリスラン(25)の来日初ゴールをお膳立てすると、自らも同23分に芸術的なループシュートでプロ初得点を決めた。得点力不足に悩まされていたチームに、公式戦3戦ぶりの白星を届けた。

 芸術的なプロ初ゴールを、佐々木は涼しい顔で振り返った。「結果を残すことを考えていた。これが普通かな。あそこを決めないと自分の価値がない。決められて良かった」。スタジアムから驚きの声が響いた。そのくらい常に高い意識を持ってやってきた。

 仙台でのプロデビューを目指してきた。幼稚園からサポーターとして応援を続け、下部組織のジュニアから仙台入り。ユース時代の指導者で現マイナビ仙台監督の越後和男氏(51)は「終わった後ずっと練習していましたよ」。午後9時過ぎまで居残り練習をMF茂木らとしていた。

 愛する仙台で活躍し、W杯出場や海外クラブ加入を果たす夢を声高に表明し続けてきた。だからこの日、磐田FW小川とのU-20(20歳以下)対決で負けたくなかった。「代表でもずっと一緒のグループ」と仲がいい。だが小川は同世代のエース級となるも、自らは代表から漏れることが多くなり、クラブでも結果を残せていなかった。「ここで俺の方が活躍すれば、代表の1人になる。僕も負けないプレーをする。思いっきりつぶします」と意気込んでいた。

 この日発表された同代表候補には漏れた。試合前に「俺も諦めてないぞ」と、候補入りした小川に言い切った。試合でライバルを見返してやった。渡辺監督は「これからベガルタを背負う選手になって欲しい」と期待を込めた。地元期待の新星がこの日、真のプロの第1歩を踏み出した。【秋吉裕介】

 ◆佐々木匠(ささき・たくみ)1998年(平10)3月30日生まれ、宮城出身。各年代で日本代表入りを経験し、15年10月、仙台ユースからトップに昇格。期待されながらも、昨季は2試合、合計7分の出場にとどまっていた。166センチ、59キロ。血液型A。