<J1:川崎F1-1東京V>◇第1節◇9日◇等々力

 闘将・柱谷哲二新監督(43)率いる東京Vが、J1では827日ぶりの勝ち点を挙げた。優勝候補の一角・川崎Fに互角の展開を見せ、1-1で引き分け。後半15分に投入された高卒ルーキー河野広貴(17)が、持ち味のドリブルでチームに流れを持ち込み、終了間際にFW平本が得たPKをMFディエゴが決めて同点に追い付いた。

 最初のプレーで2万大観衆の度肝を抜いた。河野は1点を追う後半15分、飯尾に代わって左MFで登場。直後に右CKのこぼれ球を拾い、中に切れ込むと見せて縦へドリブルを仕掛け、日本代表MF中村をあっさり抜き去る。「気持ち良かったです。思ったより簡単に抜けました」。中へ切れ込んでのラストパスで決定機を演出。17歳が1プレーで停滞ムードを変えた。

 後半41分にも前線とのコンビプレーから、疲れた相手が最も嫌がるドリブルで翻弄(ほんろう)した。まさに「新・和製メッシ」といったところ。その動きがチームに勢いをもたらし、終了間際の同点劇につながった。柱谷監督は「紅白戦でも調子が良く、交代は彼からと思っていた。良さはドリブル。その良さが出た」とユースから昇格した新星に目を細めた。

 東京Vユースに在籍した昨季8月にデビュー。小柄だが、怒鳴られても物おじしない性格もプロ向きだ。「緊張しなかったッス。自分、頭が悪いからッスかねえ。相手は強かったし楽しかったッス」と童顔をほころばせた。アルゼンチン代表のドリブラー、メッシが手本。菊原コーチは「日本人にはいないタイプ。ドリブルは(浦和の)田中達よりすごい。2年後には手が付けられなくなる」と将来の代表入りへ、付きっきりで指導をしている。

 新星の活躍で流れをつかんだ新生・東京Vは、3年ぶりのJ1舞台でV候補相手にドロー発進。05年12月3日大分戦以来となるJ1での勝ち点を挙げた。川崎Fの強力3トップを抑え、満足な仕事をさせなかったことに柱谷監督は「ディフェンスは体を投げ出し相手のシュートを消した。いいファイトを見せられたし、優勝候補相手の引き分けは自信になる」。名門復活へ何事にも「勝つこと」にこだわる闘将の下、東京Vがタフなチームに生まれ変わりつつある。【岡本学】